ドイツには〈マックソーセージバーガー〉、ギリシャには〈グリーク(ギリシャ風)マック〉、ニュージーランドには〈キーウィバーガー〉(ビーツという根菜がトッピングされる)がある。コスタリカには、豆入りのライス(ガジョピント)にプランテン(料理用バナナ)などが添えられた〈マックピントデラックス〉、タイには〈マックサムライ・ポークバーガー〉がある。クリスマスの時期にイギリスを訪れれば、デザートに伝統的な〈ミンスミート・アンド・カスタードパイ〉が食べられる。フランスではヤギのチーズを巻いた〈ル・マックラップ・シェーブル〉がある。アルゼンチンではメニューにワインがあり、ドイツにはビールがある。イスラエルにはユダヤ教の戒律に従ったメニュー(コーシャ)があり、ハワイの朝マックといえばスパムだ。ことほどさように、多種多様である。

 私はマクドナルドの世界的成功から、5つの重要な教訓が得られると考えている。

 1.「ブランド」と「商品」を混同してはならない

 マクドナルドというブランドが、ハンバーガーと強く結び付いているのは事実だ。しかしそのことは、肉を使用したメニューを一部の地域で完全になくすという選択を阻むものではない。同社はインドに初のベジタリアン専門店をオープンすることを発表した。現地の顧客の嗜好や信仰に配慮した結果だ。

 2. 国を問わず好まれる商品を、見極める

 マクドナルドも示しているように、たいていの企業には、どの市場にも好まれる商品があるはずだ。同社のフライドポテトやシェイクなどは、世界のほとんどの店で安定して販売されている。

 3. 新市場への進出は、新しいブランド特性を築くチャンスとなる

 アメリカでは手頃な値段で知られているマクドナルドだが、中産階級が拡大している国々の多くでは、そこで食事をすることがステータスになっている場合もある。ある市場でのマイナス要素が、必ずしも他の市場にもついてまわるわけではない。

 4.「小さな市場」が将来を左右する可能性は十分にある

 多くの企業が、世界の経済主要国しか相手にしないという過ちを犯している。マクドナルドはグローバル企業だが、収益のおよそ7割にあたる年間200億ドルは、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、イギリス、そしてもちろんアメリカの店舗から上がっている。しかし、残りの「たった3割」しか占めない国々に注意を向けているのは賢明なことだ。消費力が高まるにつれ、収益に占める割合も増えていくはずだからだ(2014年1月現在、同社は118カ国に展開中)。

 5. 顧客が求めるものは、顧客に聞く

 マクドナルドは、これだけのご当地メニューを顧客抜きで考えついたわけではない。各市場の顧客行動を観察し、現地の人々が親しめるような方法で商品をパッケージ化している。あなたの企業は新しい市場に進出する際に、現地の顧客の意見に基づいた商品を投入しているだろうか。ぜひそうすべきだ。

 5つ目のポイントは、当のマクドナルドでさえ実践を忘れる時がある。2012年に同社は、ミネソタ州に居住するモン族(ベトナム戦争終結後、ラオスの山岳地帯からインドシナ難民としてアメリカに移住した人々を主体とする)を対象とした広告キャンペーンを行った。しかしモン語への翻訳が誤っていただけでなく、これはお茶を好むモン族にコーヒーを受け入れさせることを意味した。事前にコミュニティの人々に話を聞いていたら、翻訳だけでなく商品選択も間違っていることに気づいたであろう。どの市場であれ、投入商品を決める際に顧客を中心に据えることを忘れてはならない。


HBR.ORG原文:McDonald's' Local Strategy, from El McPollo to Le McWrap Chèvre October 8, 2012

 

ナタリー・ケリー(Nataly Kelly)
企業の翻訳と現地化を支援するスマートリングの市場開発担当バイス・プレジデント