3.中心となる拠点を決める
 グローバル・イノベーションに関わる各拠点は、それぞれの役割や立場を通してプロジェクトを見ており、全体像を第一に考えようとはしない。だから、仮に各拠点の経験や専門知識に差がなくても、全拠点が同じ力を持つべきではない。リーディング拠点を1つ定め、期限と予算を守ってプロジェクトを完遂する責任を持たせる必要がある。

 例として、グローバルな電子機器メーカーのエレコンプト(仮名)と、STI(シュナイダーエレクトリックと東芝のジョイントベンチャー)のアプローチを比べてみよう。STIのプロジェクトに関わった各拠点は、それぞれが各専門分野の世界的なリーダーだった。しかしフランスの拠点は、新製品の仕様の決定に深く関わっており、プロジェクトに対する責任を持つこととなった。具体的には、プロジェクトのマネジメント・チームの調整、拠点間の業務統合、そして最終決定を担った。リーディング拠点を明確にしたことで、迅速な意思決定ができ、期限と予算を守ってプロジェクトを遂行することができた。

 一方でエレコンプトでは、各拠点が意思決定とプロジェクトの管理において平等の権限を持っていた。そのため、すべての意思決定と協力体制について、複数の拠点間での交渉が必要となった。それはどう見ても、時間のかかる煩雑なプロセスだった。各拠点が自身の立場に固執したため、しばしばこう着状態に陥った。プロジェクト開始から2年が経ち、経営上層部の方針が変わってようやく、プロジェクトを前進させるマネジメント体制が敷かれた。

 グローバル・イノベーションの組織能力を築くのは簡単ではない。しかし、適切な管理スキルやプロセスを持っていない企業には、過酷な選択が待ち受けている。局地的なプロジェクトのみを続けるのなら、数年の間はイノベーションの計画表を埋めておけるかもしれない。しかしグローバルな競争が激化すれば、やがてその取り組みはニッチな市場にしか通用しなくなる。グローバル・イノベーションの能力をいまから構築すれば、開発コストの削減や、発売までの期間短縮といったメリットを活かすことができる。何より、各地に分散した知識を活用して競争優位を築けるようになるのだ。

原注:本稿はHBR2012年10月号掲載論文“10 Rules for Managing Global Innovation”(未訳)からの抜粋である。

※グローバルな拠点網のマネジメントについては、本誌2014年2月号「ロレアル流 グローバル・チームのつくり方」(ホン・ヘジョン、イブ・L・ドーズ)も併せて参照されたい。

 

HBR.ORG原文:Structure Your Global Team for Innovation October 4, 2012

 

キーリー・ウィルソン(Keeley Wilson)
INSEADのシニア・リサーチ・フェロー。イブ・L・ドーズとの共著にManaging Global Innovation (HBR Press、2012年)がある。

イブ・L・ドーズ(Yves L. Doz)
INSEADのソルベイ寄付講座教授。技術イノベーション論を担当。キーリー・ウィルソンとの共著にManaging Global Innovation (HBR Press、2012年)がある。