オーバースペックによる
高コスト体質を崩せ

 インフラ産業としての日本の技術ポテンシャルは高いわけですが、同時に課題も多い。先に書いたインフラ会社の“縛り”も大きな課題ですが、それ以上に喫緊の対応が必要なのが、価格競争力が弱い、つまり価格が高いことでしょう。

 社会インフラ機器に限らず日本製品は高コストになりがちで、新興国などで価格競争力がないのは、ある意味当然です。高機能・高品質を売り物にし、人件費の高い日本でつくられているうえ、長期間にわたった円高が、弱り目に祟り目となりました。

 価格競争力の弱さは、それだけが理由ではありません。最大の原因は、設計段階におけるオーバースペックにあります。日本企業は、海外市場で要求されている品質や機能を大きく上回る製品をついつい作ってしまうのです。インフラもまた例外ではありません。

 日本のインフラ産業の技術は、電力会社や鉄道会社、水道局などの厳しい品質要求に鍛えられて向上しました。それはとりもなおさず、消費者の要求が厳しかったからです。さらに、組織内部のしがらみや心理に根差した理由もあります。

 例えば、製品の受注先から要求されたスペックで設計したため、社内の品質保証ルールに抵触するというケースです。社内ルールは過去から延々と厳しい要求に応えるために積み上げられてきたものですが、逆にルールが“化け物”のように巨大化かつ絶対化してしまい、それらに完全に対応していないと社内の承認が下りない事態に陥るのです。

 また、技術者の心理として、スペックを下げた製品づくりは「2流の仕事」という受け止め方をされがちです。耐久性があり長く安定稼働することが求められる社会インフラ機器づくりでは、「20年など短い。最低30年はもつものを作れ」と叱咤されてきました。

 スペックを下げることは、技術者としての誇りにも関わってきます。それは理解できないことではありませんが、本格的に海外展開を図ろうとするならば、こうした問題にも向き合い、思い切ったオーバースペック対策を取らなければ、高コストという課題を解決できません。

 ここで勘違いをしないでほしいのは、「スペックを下げる=低品質で勝負する」ではないということです。新興国などが要求するスペックが、技術的に数十年前のレベルであったとしても、そのスペック自体を高品質に実現することが重要なのであり、品質や機能が最先端でも標準的でもなくても、無駄なオーバースペックをなくすというスタンスが必要なのです。

 オーバ-スペック問題は、家電をはじめとして日本産業が海外展開で苦杯をなめてきたテーマです。サムスンやLGが、進出国の消費者が求めるスペックを理解し、それに見合った高品質製品を購入しやすい価格で販売して成功を収めたように、インフラ産業の海外展開においては彼らの教訓は厳粛に受け止めなくてはなりません。