メーカーとインフラ会社が共同で
海外展開の方法論を確立せよ

 鉄道や電力は、そのインフラを機能させようとする国や社会に対して「組織的経営とはどのようなものか」を学習させる契機になっています。そして、すでにお気づきでしょうが、インフラは、その運用も含めて何層もの複雑性を備えており、前回に指摘した「複雑性産業」の典型例でもあるのです。

 ワンパッケージの海外展開を考えるとき、企業が意識しなければならないのは、日本のインフラ会社(電力、通信、鉄道など)の“縛り”から抜け出すことです。どういうことかというと、そもそもインフラ関連技術は国内で圧倒的(独占的)な存在であるインフラ会社の要求や指示によって鍛えられたものであり、機器供給メーカーは必ずしも自立した存在ではなかったといえます。しかもインフラ会社は、自社への供給を優先するよう求めます。

 したがって、機器メーカーとしては、海外展開への資源配分が薄くなり、(意図的ではないとしても)インフラ会社の存在自体が“内向きになる縛り”として機能してしまうのです。これについて私たちは苦い経験を味わっています。それは、携帯電話の海外展開です。

 1990年代に技術水準世界一であった日本の携帯電話が、国際展開ではまったく成功しませんでした。国内の通信機器メーカーは、同じ規格での競争を求められ、一方で十分な利益が通信会社からもたらされました。これでは、「海外に出て行け」と言われても、出て行けません。海外展開への資源配分がおろそかになるのは当然でしょう。

 しかし、通信会社と機器メーカーが初めから海外戦略を共有していたならば、世界の通信市場はまったく別な風景を見せていたはずです。

 メーカーは、インフラ会社と共同で海外展開の方法論の確立を急ぐべきです。新興国向けではさらにファイナンスまでセットするなど、ワンパッケージでの受注の大きな鍵になります。

 東京メトロがベトナム・ハノイの都市交通整備の支援に乗り出したり、JR東日本がヨーロッパとシンガポールに海外拠点を設けようとしたりしていますが、インフラ会社自身の海外展開によって、オール・ジャパンの入口を広げていくという意味では、大いに歓迎すべき状況といえるでしょう。