2.収入の変動
 手頃な価格だけにフォーカスしていては、BOP市場でのサクセスストーリーは生まれない。企業は難しい技を成功させる必要がある。すなわち、熱望される商品やサービスをつくり、それを収入の低さだけでなく、収入の変動にも対応するビジネスモデルと組み合わせることだ。多くの新興国における絶対所得を見れば、消費水準は現在よりもっと高くなっていいはずだ(特に中国)。しかしそうなっていない原因として挙げられるのが、長い目で見た将来への不安と、お金に対する保守的な態度である。

 同様の状況が先進諸国でも拡大している。アメリカでは、不況の影響で信用が引き締められるなか、人々は貯蓄を増やすことを余儀なくされてきた。企業は新しいもの好きの人に頼るのではなく、明確な価値提案に基づいて、柔軟性とイノベーションを提供するビジネスモデルを構築する必要がある。韓国の現代自動車が市場シェアを急速に拡大した一因は、2008年の「ヒュンダイ・アシュアランス」という保証プログラムにある。購入者が失業した際に、その人の信用情報を傷つけることなく車を買い戻すというものだ。また、ベスト・バイの「バイバック」という保証プログラムでは、購入した商品をアップグレード製品に買い替える際、古いバージョンのほうを保証された金額で店側に売却できる。時代の新たな常識(ニュー・ノーマル)によって、企業はどの地域にあっても、収入の変動に対応するビジネスモデルを設計せざるを得なくなっている。

3.消費者のペイン・ポイント(悩みの種)への理解
 そう遠くない将来、企業はBOP市場の消費者だけでなく西側の消費者についても学ぶことを目的として、新興国市場に進出するかもしれない。コールセンター事業で大きな経験を積んでいる国(インドとフィリピンが代表的である)は、イノベーターとして優位に立てる。なぜなら、消費者のペイン・ポイント(悩みの種)はイノベーションのきっかけとなるからだ。そして顧客サービスセンターに電話をかけるほとんどの人は、悩みを抱えている。

 地球の反対側で電話を受けている人々は、たいていが大学の学位を持ち、豊富なトレーニングを受けている。彼らは2~3年の経験を積む間に、さまざまな地域に住むさまざまな背景の人々の苦情を聞き、最も厄介な顧客と会話する術を身に付けていく。やがてそれらの国々に起業家精神が根付き、BOP市場の消費者に囲まれた若いプロフェッショナルが台頭してくる。そうなれば、世界の消費者の嗜好に関する知見の獲得や、幅広い製品・サービスに関するデザイン方針の開発、あるいはグローバル企業の設立において、新興国市場こそが適した場所となるのは想像に難くない。

 BOP市場に関する不安の大半は、企業がよい行いをすることによって成功できるのか(また、どうすればよい行いで成功できるのか)という、いまだ解明されていない疑問から生じている。1つ単純な答えを言えば、BOPビジネスの経済的価値と社会的価値は、それを行う企業や起業家によって異なるということだ。BOPの取り組みは、企業の社会的責任についての議論であってはならない。多くの場合、企業は自社のために取り組んでいると考えられる。


HBR.ORG原文:Design Lessons from the Consumer at the Bottom of the Pyramid May 17, 2011

 

ディーパ・プラハラッド(Deepa Prahalad)
戦略コンサルタント。消費者体験、テクノロジー、戦略の3要素が交わる領域を専門とする。著書にPredictable Magic: Unleash the Power of Design Strategy to Transform Your Business(ラビ・ソーニーとの共著。Wharton School Publishing、2010年)がある。