――老舗の紙メディアの会社が新しいメディアをネットで立ち上げようとしたときには、強みと弱みがあると思います。強みにはブランド力、コンテンツを作る能力、弱みは紙を守ろうという潜在的なマインドだと思います。弱みをいかに克服しようとお考えですか。

 ここでひとつアメリカの例を紹介します。ハーバードビジネススクールでクリステンセン教授とともに「イノベーションのジレンマ」を研究してきたクラーク・ギルバートという人がいます。彼は今、ユタ州ソルトレークシティにあるデザートニュース社のCEOを務めているのですが、過去数年で同社のデジタル改革を成功させました。

 彼が言うには、今の新聞業界のように破壊的イノベーションに襲われた業界の企業は、うまく改革できたとしても9%しか生き残れないそうです。そして、残り9パーセントに入れるかどうかは、カルチャーを変えられるかどうかで7、8割が決まると述べています。その意見に私も同感です。

 紙のカルチャーを引きずっていては、デジタルの世界では勝てません。死んでしまいます。では、どうすればいいか。紙とデジタルを切り離すしかないんです。オフィスにしろ、損益計算にしろ、コンテンツにしろ、経営体制にしろ、全て切り離さなければ、新しい文化は生まれません。

 そういった意味で日本のメディア企業がダメなところは、同じ企業の傘の中で、さほど権限を与えずに、デジタル部門を日陰部署のように扱ってきたことです。そのようなことをしていては上手くいくものもいきません。分社化までしなくても、独立した部署をつくり、そこに自立性を持たせ、紙の人たちに頭を下げなくていい、自律的にやれる構造をつくる。そのようなカルチャーをつくれるかどうかが重要です。

 東洋経済オンラインは、社内ベンチャーのような気分で今やっていますし、カルチャーを変えることに一番神経を使っています。若い人が多い分、カルチャーはガラッと変わったと思います。

――目指しているカルチャーとは具体的にどのようなものでしょうか。

 元々、東洋経済は自由な雰囲気の会社ですが、それをよりネットカルチャーに近づけたということですね。フラット、実力主義、多様性、トライ&エラー、横断的、集団より個人…そのような文化になるように意識しています。

――トライ&エラーとは言いますが、東洋経済というブランドを傷つけないように慎重になりはしませんか。佐々木さんは東洋経済オンラインで新しいブランドをつくろうとしているのか、既存のブランドの力を限りなくネットで活かしていこうと思っているのか。どちらでしょうか。

 まず、週刊東洋経済と東洋経済オンラインでターゲットを分けていますが、どちらも東洋経済の名前を冠しています。同じ名前を使っているので、外からみると同じブランド、同じコンセプトに見えている人もいます。こちらは分けているつもりになっていますが、その面では気を付けなければと感じています。

 その上で、既存のブランドを作り変えていこうという意識で取り組んでいます。若い方には好評ですが、昔からの読者のなかには不快に思っている人がいることも確かです。ただ、私はこれくらい極端にやったほうがいいと思っています。