「やりたいこと」は自分でしか見つけられない

――そういう遠山さんは20年近く三菱商事で働いておられたわけですが、ジレンマはなかったんですか?

遠山 だからいまこうなっているんでしょうね(笑)。

 ただ三菱商事はすごく素敵な会社です。売り手も買い手も喜ばないようなディールだったら、本気で「やめておけ」というカルチャーがあります。大きなビジネスをして「うまくかすめ取ろう」という発想の会社じゃないんです。そういう意味ではとても幸せでした。

 そんな時、私は自分の絵の個展を開きました。もともと絵を描くのが好きだったのですが、ちょうど個展をやらせてもらう機会がありました。そして自分たちで企画からすべてをやったんですが、「いいね」と言われたら、すごく嬉しかった。個展をやってみて、自分ですべてやってみて全部褒められたようで嬉しかったんです。どうせやるなら、「まるっと」嬉しいのがいいな、と。

――「まるっと」とは?

遠山 全部という意味です。商社の仕事は全体の一部分をやっているような感覚がありました。仕事で喜んでもらえても、自分が仲介したメーカーさんの製品が褒められている。「いいね」と言われていても、商社はその仲介役でしかないんです。

 絵が好きだったように、クリエーションという行為が好きだったのかもしれません。

――もともと「好き」だったものが個展をやって顕在化してしまったんですね?

遠山 そうですね。たまたま絵の個展をやったことで、「何かやりたい」病になったのでしょう。それからSoup Stock Tokyoが始まったようなものです。

――Soup Stock Tokyoもやはり、採算性よりも「やりたい」が先だったんですね。

遠山 はい、簡単に言ってしまえば、「女性がスープを飲んでほっとしているシーンが頭に思い浮かんだ」から始めた、ということになります。でも、Soup Stock Tokyoもいろんなときめきやきらめきの瞬間を重ねていったんです。個展を開いたこともその一つで、数えきれないものが浮かんで、最後に確信になりました。

 それをビジネスにしていくのは、簡単ではありませんが、かといって困難ということでもないんです。

 Soup Stock Tokyoも利益が安定したのは8年目くらい。giraffeも8年くらい。PASS THE BATONも4年かかりました。そこで踏ん張れたのは、「やりたいこと」があるからです。だから時間がかかっても利益が出るようになるんです。試行錯誤して変えていかなくてはいけない点は山ほどありますが、それをできるビジネスをしっかり固めていくメンバーはたくさんいるのでそういうメンバーの力を借りることもできます。でも「やりたいこと」は自分でしか見つけられません。