議論1:誰でも計り知れない力を持っている

 かつては学位が社会的地位を左右したが、いまでは優れたアイデアを創造する際に学位は必要とされない。ペイパル創業者で投資家のピーター・ティールも、大学中退を条件に資金援助を行っている(ティール奨学金。20歳以下の学生に、中退し起業に専念することを条件に10万ドルを提供する)。肩書きや地位はもはや不可欠ではない。かつては、選ばれたわずかな人しか手にできなかった機会も、いまでは多くの人に開かれている――たとえばMITの無料オンライン講座のように。

 実例を挙げよう。クラウドソーシングによるソリューションを通して、以前は決して聞けなかった人々の声をすくい取り、才能を活用できるようになった。そうした取り組みの1つ「フォールド・イット」(Fold It )は、タンパク質の立体構造を解明するために、誰でも参加できるオンラインのアミノ酸配列ゲームを公開した。タンパク質の立体的な分子構造を明らかにすることは、医薬研究において非常に重要な仕事で、通常は博士号を持つ科学者が取り組んでいる。だが、フォールド・イットを通して世界で最もうまく立体構造を予測したのは誰かといえば、それは「予想通り」の人物ではなかった。日中は企業幹部のアシスタントとして働く女性が、夜には世界最高の予測者となっていたのだ。この人物は自身のスキルと情熱に従って行動したのであり、この仕事を割り当てられたのでもなければ、選ばれて仕事をしていたのでもなかった。単にそれを実行しただけだ。

 今日のソーシャル時代は、貢献者とソリューションの両方に新たな扉を開いた。それによって力の源泉そのものが、これまでとは様変わりしている。クラウドソーシング、SaaSモデル、オープンソース、ソーシャルネットワーク、バーチャル・ワークといった、新たな網目状のプロセスやツール、ビジネスモデルが、新たな方法による価値創造を可能にした。ソーシャル時代の到来は、企業が価値を創造し、提供し、獲得する方法を、ビジネスモデル全体にわたって変えた。同様に、私たち個人の力の源泉も当然ながら変化している。

 ソーシャル時代を開き、形づくっているのは、ソーシャルな人間である。工業化時代には、公的な承認と従業員の人数が重んじられたが、ソーシャル時代に評価されるのは、人とのつながりを築き、創造し、貢献することができる人々だ。こうなると、「仕事」は「雇用」に縛られることがなくなる。1人ひとりが影響力を及ぼす方法をいくつも見出せるようになり、他者からその許可をもらう必要はない。