マネジャーを20人集めた会議室で、法務部のリディア・テイラーはけっして目立つ存在ではない。だが、ひとたび会話が始まれば、それは一変する。口調が柔らかく、押しが強すぎない彼女は、仕事でつき合いのある同僚と幹部から一目置かれていた。リディアには並外れた「聞く力」があり、どのタイミングで会話に入り自分の意見を述べるべきかを感覚的にわかっていた。物腰は落ち着き、率直で、どんな場合でもうろたえず、周囲が感情的になっても冷静を保った。難しい状況では、とぼけたユーモアで場を和ませた。人から挑戦されても真っ向から反撃したりせず、毅然とした態度を貫いた。社内顧客には支援を惜しまなかったが、会社をリスクに晒すような考えを推し進める相手には手厳しく対応する覚悟があった。結果として、リディアは次期ゼネラル・カウンシル(法務担当役員)の最有力候補に選ばれ、後継者として育て上げられた。

 ここで、昔から議論されてきた問題を考えてみよう。エグゼクティブ・プレゼンスは、果たして後天的に身につけることができるのだろうか。答えはイエスだ。ただし、基本的な自信を持っていること、そして予測不能の事態――経営幹部の仕事には付き物だ――に対処する覚悟を持っていることが条件である。

 では、まず基本から押さえておきたい。あなたの服装や身だしなみ、醸し出す自信について、忌憚のないフィードバックをくれる、信頼できる人を数人見つけよう。すでに述べたように、服装や身だしなみはすべてではないが、目立ったマイナスがあれば見過ごすべきではない。ある非常に優秀な女性マネジャーは、同僚からひそかに「古くさい女教師」のような身なりだと言われていた。別の猛烈型のマネジャーは、「中古車セールスマン」のようだと形容されていた。こうした表現は喜べないものだが、無視してよいものでもない。中古車セールスマンを信用する人は少ない。古くさい女教師は、リスクを恐れない姿勢や創造性とはあまり結びつかない。どちらも、経営幹部としてイノベーションや変革を導くうえで核となる資質を示すうえでマイナスである。

 そして、プレゼンテーションのスキルを磨こう。人前で話すことは幹部の重要な仕事だが、それだけではない。他の幹部たちや大人数の聴衆を前にして、堂々と立ち発言する能力は、その人物がどれだけプレッシャーに強いかを示すと見なされることが多い。大きなプレゼンの前には、落ち着いて話せるようになるまでリハーサルし、質疑応答の部分には特に注意しよう。質問された時の物腰、そして素早い受け答えが自信の程度を表すからだ。

 最も重要なのは、幹部として発言するための武器を見出すことだ。つまり、自分ならではの能力を見極め、それを徹底的に活用するのだ。生来の人当たりのよさで、場を自分のものにできる人もいる。リディア・テイラーのように、聞く力やタイミング、相手の激しい感情に流されない冷静さを武器にする人もいる。ますます多様化するこの世界では、人それぞれに異なるエグゼクティブ・プレゼンスがあるだろう。しかしどの人にも共通することがある。困難な局面でリーダーの地位をつかむためには、他者の信頼を勝ち取ることが不可欠なのだ。

 

HBR.ORG原文:Deconstructing Executive Presence August 22, 2012

 

ジョン・ビーソン(John Beeson)
ビーソン・コンサルティング社長。後継者育成、エグゼクティブ育成、組織設計を専門とする。