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西田善太氏:『BRUTUS』編集長。博報堂のコピーライター職から、1991年にマガジンハウス入社。『GINZA』編集部、『Casa BRUTUS』副編集長を経て、2007年12月より現職。

テレビや雑誌だけでなくWEBサイトやSNSなど、今はあらゆるところに情報があふれ、伝達回路がますます多様化するなかで、ブランドがターゲットを明確にすることなくメッセージを伝えようとしても、自分には関係のないものとして流されてしまうどころか、大抵は情報の渦に飲み込まれ、そもそも届かない――。これが、ブランドプロモーションのレリヴァンシーが低いことによる弊害です。

一方、アウディは「知性」を軸とする一貫したプロモーション戦略をとることで、メッセージの具体性がぼやけることなく、ブランドが届けたいと思っている層に届けることができていると西田氏は言います。

「リーマン・ショックなどを経て、坂の上の雲を目指して頑張れば良い生活が待っているというイメージが崩壊した結果、『いつかは、クラウン』のような社会的なステータスの高さをブランドの価値に求めるやり方では、もはや生活者とつながれなくなっている。しかし、アウディは知性や教養というステータス以外の魅力を感じさせることで、知的なもの、先進的なものに興味がある人々にとって、『アウディは自分のためにあるクルマだ』と感じさせることに成功しています。まさにプロモーションのレリヴァンシーの高さが、ほかの高級車にはない、アウディのブランドとしての強さを支えているのです」

アウディのメッセージが知的刺激を求める層に届いていることを裏付ける記事(「アウディ、高級車販売台数でトップ目指す」)が、2013年3月13日付のウォールストリートジャーナル日本語版に掲載されています。そこでは、アメリカにおけるアウディの躍進について報告するなかで、「アウディを支持する層はiPhone好きでもある」と書かれています。

同記事では「アウディが20代、30代、それに40代前半の生活者に対する優位性を維持している」としたうえで、「彼らの美的好みがiPhoneに象徴されており、どちらにも共通するシンプルなデザインと卓抜したテクノロジーに惹きつけられている」と分析しているのです。

つまり、アウディはアップルを愛するような知的好奇心が旺盛な人々にとって、自分と同じ価値観を共有できるブランドとして受け入れられているということ。「知性」を軸としたアウディのブランド価値は、こうした感度の高いユーザーとの共犯関係でつくられているということができるでしょう。