●理由づけ(Rationalizing)
 このスタイルが不適切なのは、説得される側が「自分の意見は無視されている」「自分たちの感情よりもデータが重視されている」と感じて、嫌気が差している場合だ。こちらが事実のみに基づいた議論を繰り返したり、価値観に基づいた解決策を無視したり、他者の感情や気持ちを考慮しなかったりするような時に、こういう状況が引き起こされる。それだけではなく、こうした行動は挑戦的、あるいは自己中心的と受け取られ、相手の対決姿勢を促すことがある。

●主張(Asserting)
 主張は一般的に、聞き手が圧力を感じている時には効果がない。特に、やり方が攻撃的であったり強引な内容であったり、不合理な要求のように思われる場合だ。これは、受動的攻撃性や消極的行動を伴う抵抗や憤りを誘発する場合がある。その結果、たとえ、相手を服従させることはできても、こちらが本当に必要としているコミットメントは得られない。まさに面従腹背である。彼らは口頭では合意を表明しながらも、実際に行動する時にはこちらの意図していたようには動かないかもしれない。このスタイルが特に合わないのは、上位の人に対して影響力を及ぼそうとする時、そしてコラボレーションを必要とする時だ。

●交渉(Negotiating)
 交渉が効果的でないのは、こちらの立ち位置が人々を混乱させている場合だ。交渉にいそしむあまり全体像を見失ったり、長期の戦略においてきわめて重要な何かを諦めてしまったりする時に、こうした状況が生じる。対立を避けようとして、他のステークホルダーたちの要求や希望を受け入れて譲歩すると、彼らよりも問題への関心が薄いと見られてしまう場合がある。また、相手より弱い立場にいたり、取り引きの材料がない場合も、このスタイルには疑問が持たれる。

●鼓舞(Inspiring)
 人々が欺かれていると感じ、特にはじめの段階で信頼が築かれていない場合、鼓舞による影響力は効果を発揮しない。とりわけ、目的や使命感の共有を促すために影響力が行使されたものの、結局は共通認識など存在しないと露呈した時でに著しい。あるいは、こちらが別の隠れた目的を持っている、または全体的に透明性に欠けると見なされた場合も、こうした状況が生じる。これらのすべてが、信頼を壊し、疑念を生じさせ、こちらの今後の信用を損ねることになる。

●関係づくり(Bridging)
 関係者について知っていることを利用して影響力を行使する場合、関係当事者に「自分はたぶらかされているのではないか」と思われてしまうと効果はない。そうなると、自分の意見に人々を導くことができず、その動機を疑われることになる。最初の段階で共通認識がほとんど確立されていない時、あるいは対立が明確な時は要注意である。そうした状況で関係づくりによって影響力を及ぼそうとしても、自己中心的、あるいは他の関係者の利害に対して不誠実だと見なされる場合がある。さらに、関係づくりの過程で、必要条件や時間が十分整っていないのにコラボレーションを強く求めると、組織に不信感が生じることになる。

 さまざまな影響力のスタイルについて時間をかけて学び、周囲の状況に目を向けよう。そうしなければ、短期的には自分の能力を発揮できず、長期的には組織にダメージを与えることになる。自分のスタイルが通用しないのはどんな時か、把握しているだろうか。影響力のスキルを高めるために、あなたは何をすればよいだろうか。


HBR.ORG原文:When Your Influence Is Ineffective March 28, 2012

 

クリス・マッスルホワイト(Chris Musselwhite)
リーダーシップ開発を行うコンサルティング会社、ディスカバリー・ラーニングのプレジデント兼CEO。

タミー・プラフ(Tammie Plouffe)
リーダーシップ開発を行うコンサルティング会社、イノベーティブ・パスウェイのマネージング・パートナー。