私は、ダンが直面している「課題」に対しては、同調していたかもしれない。しかし、あの場での私の行動と発言のすべては、私がダン本人と――そしてロビンとすら――同調していなかったことを表している。

 ピンクによれば、同調の第1のルールは、自分の力を抑えることであるという。そのためには自分の立場を離れ、相手の立場に立つ必要がある。このことを謙虚さと関連づけた、ある非常に優秀な販売員の言葉をピンクは引用している――「私は小さな椅子に座りますから、あなたは大きな椅子に座ってくださいね」という態度を取るのが、優れた販売員であるという。

 私がやったのは正反対のことだった。私は椅子を高くした――文字通りに、そして象徴的な意味でも。会話の主導権を握り、その話題は後に回そうというロビンの提案を退けた。自分が状況を完全に理解していること、自分こそが助けを求めるべき人間であることをダンに証明するために、限られた時間を費やした。

 私は、新刊をほめられていい気になり、時間が押しているために急ぎすぎ、ロビンとダンを感心させることに躍起となった。自分が有能であると証明しようとするあまり、結局は無能であると思わせてしまった。私の提案した解決策は妥当かもしれなかったが、コンサルタントとクライアントの関係としては確実に間違っていた。

 私は自身の外向的な性格――セールスにおいては強みとされることが多い――に従って行動した。しかしピンクの研究によれば、外向的であることは実は不利にもなるという。なぜなら、聞くべき時にしゃべってしまう場合が多いからだ。

 私が耳を傾けていた時間もあった。その目的は、自分が問題を解決できることをダンに証明するために、十分な情報を集めることだった。つまり、自分の言葉に説得力を持たせるために相手の話を聞いていたのだ。

 しかし、なぜそれではだめだったのだろう? ダンも私に関する情報を求め、私が彼のために何ができるかを知りたがっていたのではないのか?

 そうかもしれない。しかし、私がダンについてロビンからいろいろ聞いていたのと同じように、彼も私の本を読んでいて、私についてはよく知っていると言った。だから、ダンは私が話すのを聞きたかったわけではない。私に耳を傾けてほしかったのだ。

 ダンが本当に見極めたいと思っていたのは――ほとんどの人も同様だが――このコンサルタントと一緒にやっていくのはどんな感じなのか、ということだ。短い会話を通して私が彼に与えた印象は、こうだった――どこかの専門家が立ち入ってきて、ああしろこうしろと指図してくる。

 私がダンでも、自分のような者は雇わないだろう。

 さて、次回はどんな風にやればいいのか。どうぞ、と言われた椅子に座り、ダンの話に耳を傾ける。そしていくつも質問を投げかけるだろう。彼の立場に立って理解し、彼の視点で分析し、彼の気持ちに共感するために。彼に同調するのだ。

 そのためには、自分の考える解決策にとらわれないようにする。雇ってもらおうと躍起にならず、ダンが何を必要としているかを上手に手短にまとめたりしない。自分の能力を証明しようとしてはならない。

 私の目標――私がその場にいる目的――は、相手と気持ちを通じ合わせることなのだ。それがうまくできれば、自分に何ができるかを示そうと焦る必要もないだろう。そのための時間は、一緒に取り組みを始めたあとにたっぷりあるのだから。

※個人名と細部は変更している。
※本記事で取り上げられている「同調」については、本誌2013年1月号のダニエル・ピンク氏インタビュー「力の源泉は情報から信頼へ」も併せてお読みいただきたい。


HBR.ORG原文:How Not to Lose a Sale March 4, 2013

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。