つまり、クラフトマンシップを広くシェアしていく動きは、職人の養成や保護といったサステナブルな企業活動としてだけでなく、ブランドのファンを増やすことにも貢献しているのです。

未来について語るブランドが、人々の共感を呼ぶ

また、オープンソース化はラグジュアリーブランドにとって競争優位な立場を与える効果もあります。

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兼松佳宏氏:『greenz.jp』編集長/NPO法人グリーンズ理事。ウェブデザイナーからCSRコンサルティング企業に転職後、2006年にフリーランスのクリエイティブディレクターとして独立。WEBマガジン『greenz.jp』の立ち上げに関わる。2010年12月より現職。著書に『ソーシャルデザイン』、『日本をソーシャルデザインする』(ともにグリーンズ編)など。

より良い未来をつくるためのヒントを発信するWEBマガジン『greenz.jp』編集長の兼松佳宏氏は、「ソーシャルメディアで嘘が暴かれるようになった結果、“本当に良いもの”とは何かが問われるようになっている」として、こう語ります。

「ずっと工房のなかで伝えられてきた職人技を開放していく最大のメリットは、オープンにすればするほど、そのブランドが“本物”として受け入れられることにあります。要するに、隠さないことが何よりの品質の証明となっているのです。そもそも中身がダメだったら、オープンにすることは始めからできないですしね。しかも、その誠実であろうとする姿勢は人々の共感を呼びやすい。ブランドを支えるコミュニティの形成にも、オープンソース化は役立っているのです」

これは大量生産・大量消費ではないラグジュアリーブランドにとって、欠かせない要素でもあります。そこでは共感を軸にした消費スタイルが成立し、ブランドは尊敬されるものから、より身近な愛されるものに変わっていくことが求められます。

「そのためには『良い技術でものを作る』というだけでは足りないのかもしれません。これからの時代において、技術の粋を集めた高級品が果たす役割は何なのか。誰が、どんな状況でそれを手にしたら幸せになるのか、改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。身の丈以上の虚栄心を煽るものではなく、本物に触れる機会を提供すること。培ってきた歴史と同じくらいのスケールで、持続可能な未来について語ること。価値観が多様化するなかであっても、自分たちの消費行動をどうより良い未来につなげていくかという問題意識は、誰もが共有できることだと思います」(兼松氏)

次回は、高級車市場で広まっている新たなプロモーション戦力について見ていくことで、ラグジュアリーブランドが消費者と、どんなコミュニケーションのあり方を模索しているのか検証していきます。