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世界中のフェンディが行った“手仕事”の素晴らしさを未来に伝えるプロジェクト「Fatto A Mano For The Future」。日本では新宿伊勢丹で開催され、フェンディの革職人と加賀象嵌作家の竹松歩氏のコラボ作品が販売された。

また、学校ほど大規模な例でなくとも、各国のアーティストやデザイナーとのコラボによってブランドのコアを守り伝えていこうとする試みも行われています。

イタリア・ローマのラグジュアリーブランド「フェンディ」は、「Fatto A Mano For The Future」というイベントを世界中で実施。「Fatto A Mano」がイタリア語で「手仕事」を意味するように、これもヴァンクリーフ&アーペルやボッテガ・ヴェネタと同じく、クラフトマンシップのDNAを未来に継承していくための試みです。

日本では2011年4月から5月に伊勢丹新宿本店などで、金沢の伝統工芸「加賀象嵌」の若手作家、竹松歩氏とフェンディの革職人がコラボ。フィレンツェにあるフェンディの古い工房が再現された空間で、最高級レザーを使用した作品の共同制作を披露しました。

確かに、ラグジュアリーブランドにおいて職人の技を保護するだけでなく、シェアしていく取り組みは広まっているようです。しかし、それは同時に、ブランドが大切に守り伝えてきた貴重な財産が流出してしまうことを意味しないのでしょうか?

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阿久津聡氏:一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。一橋大学商学部卒。同大学大学院商学研究科修了。カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院 MS(経営工学修士)・Ph.D.(経営学博士)。同校研究員、一橋大学商学部専任講師などを経て現職。専門は、マーケティング、消費者心理学、ブランド論、行動経済学、交渉論。

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授で、マーケティングやブランド論を専門とする阿久津聡氏は、そんな疑問に対して次のように語ります。

「オープンにしたことで、すぐに消滅してしまうようなものは、そもそもラグジュアリーという価値の源泉とは考えにくいですね。ラグジュアリーブランドとはクラフトマンシップのような歴史に裏打ちされた財産をコアとすることによって成立しているものであり、さまざまな解釈が入ってきても、そう簡単にブレることはないはずです」

さらに阿久津氏は、ラグジュアリーブランドがクラフトマンシップを公開しつつあることについて、ソーシャルメディアの台頭が関連しているのではないかといいます。

「ソーシャルメディア時代になって、ブランドの情報発信の仕方も多様化しました。企業には、これまで以上に積極的にブランドの立ち位置を明らかにし、ブランドアイデンティティとブランドイメージを消費者とのコミュニケーションを通じて一致させることが求められているわけです。例えば、クラフトマンシップというブランドのコアを見せていくことは、人々にブランドアイデンティティを訴求することにつながっています。特に学校やイベントなどの参加型のコミュニケーションを活発に行うことによって、消費者はブランドの本質的な魅力を実感することができ、その価値を再認識するのです」