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ボッテガ・ヴェネタの留学支援プロジェクトでは、職人から直接「イントレチャート」の技法を伝授される場面も。

この取り組みの興味深いところは、自社の利益だけを考えて創設した学校ではないこと。ボッテガ・ヴェネタが資金を提供したにもかかわらず、授業料が基本的に免状され、なおかつ、卒業後にブランドへの就職を義務づけられていないのです。

この学校で生徒たちはボッテガ・ヴェネタを支える職人たちから技術を学び、その真髄を身に付けていきます。しかも、その技術はひとつの企業だけで独占されるものではなく、世界中に巣立っていく生徒たちの間で公共財のようにシェアされる――。

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東日本大震災の被災者を対象としたイタリアの留学支援プログラムでは、3人の若者が選考された。(写真左から)佐藤謙行さん、小田部恵美さん、小池夕希菜さん。

クラフトマンシップの魅力を後世に伝え、保護していくという意味ではサステナブルな企業活動でありますが、「シェア」という部分に注目すれば、これは同時に、ラグジュアリーブランドにおける「オープンソース化」(ノウハウを広く公開し、共有する)の試みということもできるでしょう。

ノウハウを独占しないこうした活動について、ボッテガ・ヴェネタはグローバルに展開するラグジュアリーブランドが担うべき責任であると考えています。

その姿勢を証明するように、東日本大震災後には被災した若者を対象としたイタリアへの留学支援プログラムを発表。選考に合格した3人は2012年1月から3カ月間、ヴィチェンツァの工房で熟練職人から直接に技術を教えてもらっただけでなく、ヴェネチア建築大学にて皮革製品の企画に必要な概論も受講。さらにはボッテガ・ヴェネタの店舗研修も体験しました。

ファッションジャーナリストの生駒芳子氏は、同プログラムの審査員のひとりとして学生の選考にあたりました。生駒氏はプログラムに対する反響は大きかったとしたうえで、「そこにはラグジュアリーブランドにこそ求められる、現代的な社会貢献のかたちがあった」と評します。