■クロージング
 クロージングは、聴き手の心に、メッセージを焼き付ける重要なパートです。竹田恆和理事長が最後に再び登場して、次のような言葉で、IOC評価委員会のメンバーに、東京への支持を訴えました。

「東京に投票して下さい。それは保証された開催への投票です。東京に投票して下さい。それはあらゆる意味で素晴らしさを経験できる大会への投票です。東京に投票して下さい。それはスポーツに恩恵をもたらすグローバルなビジョンへの投票です。今日から2020年まで、そしてその後何十年にもわたって」

 このように、一定のリズムで、同じ表現を繰り返しながら、IOCのメンバーに、東京への投票という具体的なアクションを強く呼びかけたのでした。竹田理事長のオリンピック招致に賭ける強い意志は、聴き手の心に強く響いたことと思われます。

 これまで見てきたように、チームジャパンのプレゼンテーションは、聴き手の立場に立った明快なメッセージを持つとともに、オープニング、ボディ、クロージングの3幕構成を用いながら、主張を論理的に支える、しっかりとした構造で組み立てられていることが分かります。

 そのうえで、佐藤真海選手の苦難を乗り越えるストーリーや、高円宮妃久子さまの心のこもった感謝のお言葉、安倍首相の力強いグローバル・ビジョン、そして、竹田理事長の招致に賭ける強い意志が、IOC評価委員の感情を揺さぶり、信頼感を抱かせる役割を果たしていたと言えるでしょう。

 人々の内なる動機を刺激して、自発的な行動に駆り立てるスピーチには、明確なメッセージがあり、その主張がしっかりとした構成で支えられ、実体験をありありと描くストーリーや、未来に向けた力強い意志とビジョンがちりばめられているのです。

 さて次回は、ストーリーとビジョンの語り方について、解説します。

(つづく)

*第3回は2013年12月17日公開予定です。

【連載バックナンバー】
第1回 勇気を出して、思いを語れ

 

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