第三に、中国企業には、ブランド戦略を構築し遂行する人材が不足しているだけでなく、経営トップがその意思をさほど持っていない。中国企業と緊密に連携してブランディングの課題に取り組んでいるプロフェット(筆者が副会長を務めるコンサルティング会社)の同僚たちによれば、中国の企業幹部はマーケティングに疎く、オペレーション、コスト、機能的便益の提供をより重視している。また、中国企業は全体として、グローバル市場における直接的な経験や理解、順応という点で他国のグローバル企業よりはるかに遅れを取っており、その変革には何世代とかかる。そもそも、強いブランドや顧客との長期的な関係を基盤としたグローバルビジネスを築こうと思っていない。考え方が違うのだ。ブランディングに対するトップの無頓着は、中国企業における独裁的な経営体制によって助長されている。たとえビジョンが存在したとしても、それを組織全体に伝える効果的なプログラムがない。社員が率直に意見を述べることはなく、幹部に疑問を投げかけることは許されない。社員が事業ビジョンを理解していなければ、それに沿ったブランディングを遂行しようがない。

 中国企業は、ブランド戦略の構築や実行に関してほとんどのグローバル企業より何十年も遅れを取っている。では、彼らがブランディングでサムスンやGE、ネスレのようなプレーヤーに追いつく見込みはあるのだろうか?

 中国がブランドの構築に注力すれば、今後数十年間にわたって自国の世界展望を犠牲にすることになるだろう。しかし、中国企業はその能力を一から築いていく必要はない。優秀なグローバル企業の手本に習えば、このプロセスを加速させる方法は少なくとも2つある。

 1つは、強力なブランド・マネジメントのシステムや人材を持つ企業を買収して、その知的財産や人材を活用することだ。中国の自動車メーカー、ジーリー(吉利汽車)によるボルボの買収はその一例といえるだろう――たとえ本来の動機は他にあったにせよ。そうした買収では、新しく取り入れた能力を組織全体で受け入れられるかどうかがカギになる。

 もう1つは、コンサルタントや外部の人材の登用によってその能力を高めるという方法だ。消費者向け家電メーカーのハイアールがこのタイプに該当するかもしれない。要するに、そうした資源を持つところから、人材や知識を引き込めばよいのだ。一からつくり上げるより、よそで成功したやり方を真似るほうが確実に楽だ。しかし、この戦略を取り入れるべき中国のベンチャー企業は、倹約に努めるあまり、実行に必要な大きなビジョンを持たないままだ。

「模倣して改良する」方針に従ってブランディングとイノベーションをものにしている、手本になりそうな企業もいくつかある。たとえば、低価格スマートフォンのブランドであるシャオミ(小米科技)は、ネット通販チャネル(PCの販売チャネルに変革をもたらしたデルを思い出そう)と、顧客の心をつかむアクセサリーやサービスを武器にしている。また、インターネットサービス・ポータルのテンセント(騰訊控股)は、無料アプリWeChatなどのサービスをマレーシアなど海外に展開している。このアプリは、世界で2億人以上が利用しているといわれ、非常に優れたブランド広告に支えられている。

 こうした成功例はあるものの、大多数の中国企業が近い将来にこのような戦術を採用するとは考えにくい。何よりも必要なのは、これまでの高成長重視で保護主義的な国家戦略と決別するような、経営トップの意識転換である。さもなければ、中国のブランディングやマーケティングにおける弱みが、グローバル市場でビジネスリーダーに上り詰めようとするその足を今後も引っ張り続けるだろう。


HBR.ORG原文:The Real Reasons Chinese Firms Have Weak Branding June 6, 2013

 

デイビッド A. アーカー(David Aaker)
カリフォルニア大学バークレー校 名誉教授・電通顧問。ブランド論の第一人者。主な著書に『ブランド・エクイティ戦略』『ブランド優位の戦略』『ブランド・リーダーシップ』『ブランド・ポートフォリオ戦略』『シナジー・マーケティング』(以上、ダイヤモンド社)などがある。