サマンサは戦略の仕事に取り組むかたわら、自社に持続可能性という考え方を植え付ける機会を見出し動き始めた。これは刺激的だが気の遠くなるような取り組みだ――膨大な数の従業員、拠点、設備、トラック、そのほかの実物資産を考えれば。

 サマンサは、一流のアイデア・アントレプレナーたちが用いている手法のいくつかを自分の活動に取り入れた。以下に紹介しよう。

●証拠を蓄積する
 あるアイデアに影響力を持たせるためには、それを裏づける膨大な材料――データ、参考資料、事例、ストーリー、分析――が必要であり、収集には長い年月を要することもある。サマンサはそこまで長くはかからなかったが、“在野の専門家”になるには十分なだけの材料を集めた。持続可能性について公式に発表するまでに、1年がかりでアイデアを練り上げた(もっぱら勤務時間外を利用した)。その間、大勢の人々と個人的に話すことで、意見を募り、アイデアと実践方法を洗練させ、コネをつくり、支持者を獲得していった。

●実践手段を確立する
 日常的に行える具体的な実践手段を示さない限り、アイデアは抽象的なままであり、変化をもたらすことはない。ドッグトレーナーのシーザー・ミランのアイデアは、「穏やかで毅然とした」訓練法を通して有効となる。サマンサは自社のさまざまな部署にいる同僚たちと協力し、ボランティアのプログラム、太陽エネルギーの試験的活用、戦略的な慈善パートナーシップを立ち上げた。これらを通して社員は、持続可能性の理論面を受け入れるより先に、実際に行動を起こすことになった。

●自分ならではの表現を編み出す
 とはいえ、理論なき実践は小手先のテクニックにすぎない。自分の理論を表現するのに最良の形式――スピーチ、動画、文章、ビジュアル要素など何でもいい――を見つけ、自分ならではの表現を編み出すために活用しよう。アイデアを余すところなく伝える、信憑性と説得力のある主張を展開するのだ。サマンサはアイデアを短い動画にまとめ、アイアン・マウンテンとコミュニティとの関わりを示すことで、社員の心に訴えて意欲を引き出した。

●他者を巻き込み、アイデアを息吹かせる
 サマンサは、TEDで講演したり「コルベア・レポート」(トーク番組)に出演したりするつもりはなかったが、他者を巻き込む必要はあった――持続可能性というアイデアに最も影響を受け、最も実践できる人々だ。アイデアが自分の手を離れても生き続けるようにする唯一の手段は、アイデアの持ち主が直接姿を見せて語りかけることだ。彼女はアイアン・マウンテンの多くの部門や施設を巡回して説明会を開き、意見交換と質疑応答を行った。彼女が帰った後も、社員は話題を続けた。アイデアが、息吹きを始めたのだ。