そのとき、ボッテガ・ヴェネタというブランドが幅広い人々から支持される理由も見えてきます。前出の宮澤氏が言います。

「生活者はブランドにどれだけ自分のライフスタイルを豊かにしてくれるのかという本質的な価値を求めています。内的な動機が刺激されないと、人々は動かなくなっているのです。一方で、押し付けがましいアピールはかえって嫌われてしまう傾向があります。彼らを動かすためには、ライフスタイルを一方的に提案するのではなく、ブランドの世界観のなかで、日々の生活のヒントになるような素材を散りばめる必要がある。それが魅力的に見えれば生活者は自分から勝手にブランドの世界を再構成するよう動きます。ボッテガ・ヴェネタの『自分のイニシャルだけで十分』という控えめなスローガンは、この新しい消費形態を先取りしていたのかもしれません」

与えられるラグジュアリーから、参加型のラグジュアリーへ。ブランドがラグジュアリーのプラットフォームとして機能することで、さまざまな価値観を広く受け入れることができるようになっているわけです。

こうした例は、ボッテガ・ヴェネタ以外にも現れ始めています。

ラグジュアリーブランドがものづくりのプラットフォームになる

ラグジュアリーブランドのプラットフォーム化で増えているケースとしては、ラグジュアリーブランドによる職人養成学校の開校を欠かすことができません。

2012年にジュエリーブランドの「Van Cleef & Arpels」がジュエリー学校「レコール ヴァン クリーフ&アーペル」をパリのヴァンドーム広場に創設したほか、ボッテガ・ヴェネタも2006年に工房のあるヴィチェンツァに学校を開いています。

ラグジュアリーブランドの歴史において秘伝的に伝えられてきた職人の技術を公開することで、ブランドというプラットフォームをより活発化させる。それは結果的に、職人芸にブランドのコア部分を据えているラグジュアリーブランドのサステナブル志向も表しています。

次回はボッテガ・ヴェネタ編の後半として、こうした学校を通じたラグジュアリーブランドのコミュニケーションが持つ意味について詳しく掘り下げていきます。