ボッテガ・ヴェネタには、そんなモットーを象徴する「When your own initials are enough(自分のイニシャルだけで十分)」という有名なスローガンがあり、見せかけではない本質的なラグジュアリーを追求する姿勢を表しています。

ライフスタイルは提案するものではなく、感じさせるもの

「この言葉を掲げてマイヤーのボッテガ・ヴェネタが登場したときは、非常に新鮮な印象を受けました」と話すのは、元『Marie Claire』編集長でファッションジャーナリストの生駒芳子氏です。

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生駒芳子氏:ファッションジャーナリスト。東京外国語大学フランス語科卒業。『VOGUE』、『ELLE』を経て、2004年に『Marie Claire』編集長に就任。社会問題を取り込んだファッション誌を日本で初めて立ち上げ、2008年に独立。現在はフリーランスとして活躍するかたわら、クール・ジャパン審議会の委員も務める。

「2000年代まではブランドロゴによってイメージを統一しながらビジネスの領域を拡張していくことがラグジュアリーブランドの基本的な考え方でした。しかし、マイヤーはまったく逆の視線で、ロゴをあえて前面に出さずに、クラフトマンシップ(職人芸)のクオリティによってブランドのアイデンティティを打ち出した。主役の座はブランド側にあるのではなく、あくまでも顧客の側にあると宣言したのです。彼はヴィチェンツァの職人技術に感銘を受け、それをブランドのコアとして拡大を試みました。ロゴにではなく、持ち主が実感できる品質の高さにこそ、ラグジュアリーの原点はあると教えてくれたのです」(生駒氏)

実際、彼がブランドの拡大に先立って打ち出したボッテガ・ヴェネタの基本原則に、「4つの礎石」というものがあります。「高品質の素材」、「卓越した職人技術」、「現代的な機能性」、そして「時代を超越するデザイン」。

これはコンフォートという概念を定義付ける要素であり、ボッテガ・ヴェネタというラグジュアリーブランドを成り立たせているコア部分でもあります。これを確保することで、初めて異業種とのコラボレートはラグジュアリーな意味を持ちます。すべての商品やサービスに一貫した意味が生まれ、ブランドの世界観をくっきりと浮かび上がらせるのです。