世界的なコングロマリットであるPPR(現在はKeringに名称変更)の傘下となった2004年以降は、その流れをさらに加速。ジュエリーラインの発表、高級ホテルである「セントレジス」(ローマ、フィレンツェ)や「パークハイアット」(シカゴ)のスイートルームのデザイン、そしてミラノ・サローネにファニチャー製品の出展まで実現したのです。

プレタポルテ、ジュエリー、ホテル、家具と、ボッテガ・ヴェネタが行ってきたコラボレーションは実に豊富で、ライフスタイル全体にまで及んでいます。ちなみに2011年には香水もラインナップに加わりました。

瞬く間に世界を席巻したトーマス・マイヤーの手腕はものすごく、ボッテガ・ヴェネタの売り上げは彼が就任した2001年から飛躍的に伸びました。9・11やリーマン・ショックがあり、世界的な不況に見舞われた2000年代にこの伸び率は驚異的です。

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宮澤正憲氏:博報堂ブランドデザイン代表。博報堂に入社後、マーケティング局にて多様な業種の企画立案に従事。2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、次世代型ブランドコンサルティングの専門組織である「博報堂ブランドデザイン」を立上げる。著書に『「応援したくなる企業」の時代』など。

しかし、なぜマイヤーは革製品から出発して、ライフスタイル全体をデザインするに至ったのでしょうか? 企業のブランディング業務を行う博報堂ブランドデザイン代表の宮澤正憲氏は、次のように語ります。

「今は商品が飽和状態に達し、新しさや豪華さといった表面的な価値だけでは生活者が動かなくなっている現状があります。そのため、商品自体よりも、その商品の持つ本質的な意味や、それによって変化するライフスタイルを魅力的に見せていかないと消費に結びつかないのです。本当に自分にとって大切と思えるかどうか。そんな本質的で個人的な心地よさを求めています」

人々の消費活動は本質的かつ、パーソナルな心地よさを求める方向に変わっている。この変化は「コンフォート」という21世紀型のライフスタイルとして急速な広まりを見せています。実はこの概念、マイヤーのブランド哲学と非常によく似ています。

マイヤーが考えるラグジュアリーとは、誰もが持っている極めてパーソナルなものであり、他人に見せびらかすものではなく、あくまで自分が幸せに感じるものこそが真のラグジュアリーだと信じているのです。