1.目的は何だろうか?
 人がアイデアを広めようとする動機はさまざまだ。富や名声を得るためであったり、反対運動を率いるためであったりする。本物の、永続的な影響力を獲得できるのは、他者にポジティブな変化をもたらしたいと願う者だ。だから、自分にこう問いかけてみよう――「なぜ私はこれをやろうとしているのか?」。アイデア・アントレプレナーであるシーザー・ミランは、動物行動学者で、“犬の気持ちがわかる”カリスマ・ドッグトレーナーでもある。彼は著作やテレビ番組、DVDなどを通してアイデアを広め、成功を築いてきた。しかしより深い動機は、動物と子どもたちへの虐待を減らすことだ。他者を助けたいという思いが強いほど、あなたの影響力は大きくなるだろう。

2.自分自身の物語を通して、アイデアを伝えることができるだろうか?
 自分のアイデアに関心を持ってもらうためには、相手の感情をかき立てなくてはならない。だからアイデア・アントレプレナーは、自らの体験を語る。私がアイデア・アントレプレナーの典型だと考えるガンジーは、南アフリカで肌の色を理由に1等車両への乗車を拒否された時のことを語った。この出来事は、彼が展開した非暴力主義による抵抗運動の原点となる。アイデアが心を打つものであるなら、相手はそれを真摯に受け入れるだろう。

3.人々にアイデアを実践してもらう方法を、考えているだろうか?
 アイデアは、日常的に用いられてこそ根付いていく。自分自身が手本となると同時に、人々が各々に合う形で応用できるようにするといい。ダニエル・カーネマンは思考についての複雑な理論を提供しているが、よりよい判断を下す方法についての実践的なガイダンスも併せて示している。おかげで最新作『ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?』(早川書房、2012年)は多くの注目を集めている。アイデアがより多くの人々に実践されるほど、その信憑性は高まる。

4.アイデアを支える材料を、十分に持っているだろうか?
 そのアイデアを、受け手自身に合った方法で正しく理解してもらうためには、さまざまな形で提示しなければならない。分析、ストーリー、事実とデータ、参考文献、事例などに基づいてアイデアを構築する必要がある。ボストン・コンサルティング・グループのシニア・アドバイザーで戦略の専門家であるジョージ・ストークは、材料の蓄積について次のような経験則を持っている――十分な材料を集めておけば、そのアイデアについて一日中話すことができる。しかも聴衆を飽きさせることなく。受け手がアイデアに対する理解をより深めるほど、そのアイデアは受け手にとってより大きな意味を持つようになる。

5.本当に伝えたい相手は誰だろうか?
 驚くことに、アイデア・アントレプレナー志望者の多くは、アイデアを誰に伝えたいのかをわかっていない。自分のアイデアによって、最も影響を受けるのは誰なのか? あなたが最も変えたいのは、誰の考え方や行動なのか? 『フランス女性は太らない―好きなものを食べ、人生を楽しむ秘訣』(日本経済新聞出版社、2013年)の著者、ミレイユ・ジュリアーノが読者層として想定していたのは、中年の高学歴女性だった。ところが、若い母親や10代の少女、野心的な女性企業幹部、さらには妻帯者やゲイの男性からも反響があった。より多様な受け手に届くほど、あなたの影響はより広がるだろう。

6.自分のアイデアは、より偉大な先人の思索とどう結びついているだろうか?
 完全にオリジナルなアイデアなど存在しない。ほとんどが既存の思想体系を改良したものだ。優れたアイデア・アントレプレナーはみな、巨人の肩の上に立ってることを認めている。実際、そのアイデアが自分だけの所有物だということに固執しないことが大切だ。自分のアイデアを解放して与えれば、人々はもっとあなたに信頼を置くだろう。

 あなたがアイデアを公表し広めようとする時、ソーシャルメディアを用いるか、それともスピーチを行うかなど、まず「手段」に焦点を当てたくなるだろう。それは間違いではない。ブログを書き、スピーチをすることで、アイデアを発展させ、洗練させることができるのだから。しかし同時に、上記のような本質的な問いに答えを出すのを怠ってはならない。その努力をすればするほど、人々があなたのアイデアを受け入れるチャンスは大きくなる。結局のところ、他者から見れば、あなた自身とそのアイデアとは、まったく同じものなのだ。偽りで人々を欺こうとしても、長続きはしない。


HBR.ORG原文:How to Influence People with Your Ideas April 30, 2013

 

ジョン・ブットマン(John Butman)
コンテンツ開発を支援するアイデア・プラットフォーム共同創設者。最新刊にBreaking Out: How to Build Influence in a World of Competing Ideas (HBR Press, 2013)がある。