ほかにも、十分な家族手当や長期の有給休暇、医療の援助、育児休暇などの魅力がある。既婚女性や母親にとってありがたいことに、公務員の労働時間は週最大で44時間と定められており、超過勤務には基本給の150%の手当が支払われる。こうした待遇は民間企業では口約束にすぎない。

 公共部門は民間ほどダイナミックでも複雑でもなく、昇進の機会も少ない。しかし、移行期にある社会ならではの逆境に直面し疲弊する女性をサポートする、快適なセーフティーネットが約束されている。

 結婚と母親業が職業的な野心より重視される文化にあって、ブラジルの働く女性は野心の追求に根深い葛藤を感じている。2008年に発表された「アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコにおける女性に対する価値観と態度」と題した調査報告によれば、野心的であることはどの国でも個人的価値として最も重視されている。ただしブラジルは例外で、野心の追求という価値観は最も軽視されている。最も重視される価値は礼儀正しさであるため、野心の追求はなおさら難しい。「女性が野心を持ってもかまわないのですが、奨励はされません」と、国際金融企業の女性シニア・マネジャーは認めている。

 しかし、野心を見せれば眉をひそめられるからといって、昨今の大卒女性が野心を持たないわけではない。事実、CWLPの調査結果では、80%の大卒女性がトップを目指している。これは中国やロシアを上回る数字であり、アメリカ(52%)をはるかにしのぐ。

 公務員になることは、かつては野心との決別を意味していた。フォーカス・グループのある参加者は、「(野心を持てば)履歴に傷がつく」と言ったほどだ。しかし、この見方は変わりつつある。公共部門は今、批判を受けないような方法で野心を育もうとしている。2014年のワールドカップと2016年のオリンピックを前に、大規模な公共プロジェクトが急ピッチで進められ、注目を浴びるだろう。ブラジルが世界の目を引く存在になるにつれ、ブラジル銀行やエネルギー大手のペトロブラスなどの主要国営企業は、人気の就職先になろうとしている。現に2010年の調査では、ペトロブラスは大学生の就職希望先のトップとなり、グーグルをもしのいでいた。

 ブラジルの公共部門で、女性はどこまで登り詰めることができるのか――これを示すのに、初の女性大統領ジルマ・ルセフほど最適のロール・モデルはいないだろう。

 ここ数年、公共部門と民間との間で、優れた女性人材をめぐる綱引きが激しくなっている。選りすぐりの人材を引きつけるために、両者がどのように変化していくかを見るのは興味深い。しかし、いずれにしても最終的な勝者は、高学歴で野心あふれるブラジルの女性たち自身だろう。

 

HBR.ORG原文:Brazil's Women Shun the Private Sector December 19, 2011

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI、前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)の創設者、所長兼エコノミスト。

リパ・ラシッド(Ripa Rashid)
センター・フォー・ワークライフ・ポリシーのシニア・バイス・プレジデント