資本主義の問題解決には透明性が欠かせない

――政府がやらないことが事業機会というのは非常に興味深い考え方だと思います。あえて伺いたいのですが、企業にとっての事業機会というのはそれだけに留まりません。当然、問題に取り組まない選択肢もあると思いますが、本当に企業の力だけで解決することはできるのでしょうか。

 確かに一般的に事業機会はいくらでもあります。しかし、それほど大規模なものはありません。一方で、社会的な問題には巨大なマーケットがあるのです。銀行は携帯電話を通じて、銀行取引ができるシステムをつくりました。例えばケニアでは、ボーダフォンが〈Mペサ〉と呼ばれるモバイル・バンキング・サービスを提供しました。


 教育分野ではカーンアカデミーが素晴らしい成果を上げています。いわゆる「学科の勉強」について、オンラインで提供しています。これにより、教師は「学科以外の教育」に力を割くこともできますし、個々の力に応じた指導ができるようになり、結果として教育水準を高めることに成功しています。

――経営者に向けてのメッセージは、社会的責任を自覚しろということではなく、大きなビジネス・チャンスがあることに気づけということですね。

 その通りです。頭を切り替えるのは易しいことではありませんが、ただ「税金を払いたくない」と言うよりも、よほど実りがあります。

――資本主義の問題がこれだけ出ていても、企業の力で解決できるものがあるとおっしゃっています。資本主義そのものへの疑問はないのでしょうか。

 いい質問ですね。これは個人的な見解ですが、資本主義というのはプロセスだと思います。そこには法と規則によって権威づけられた政府の存在が欠かせません。例えば、資本主義は優れた銀行システムがなければ成立しません。一方で、銀行システムも政府による規制があって機能するものです。こうした資本主義のプロセスが、経済活動によって広く分散し、その経済活動から得る利益こそが、企業にとってのインセンティブとなるのです。

 資本主義の問題の一端には、グローバル化が背景にあると思います。昔であれば、地元ですべて完結していたために、自分の会社などに問題があれば、すぐにそれが広まり恥ずかしい思いをしました。いまはグローバル化が進んだことで、そういった意識は薄れ、自分の問題と捉えられなくなっているのです。

 あるいは銀行には「融資する相手を知る」という基本的なルールがありますが、債権が証券化されてしまえばその顔は見えなくなってしまいます。だから透明性は重要なのです。透明性を重視すれば、本来のあるべき姿に回帰するはずです。資本主義に起こっている問題は、相手の顔が見えていなさすぎることに起因しています。我々人類は、顔を隠して行動できるほど優れてはいないのです。

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