ラグジュアリーブランドは“イジられる人”になろう!

「ピンクのクラウン」のもうひとつの教訓は、「愛されるブランドはソーシャルメディアで“イジられる”」というものです。

 発表会以降、ツイッターにはピンクのクラウンについてさまざまな感想ツイートを投稿する人が大勢現れました。一連のつぶやきは、キャンペーンサイト上で「PINK TWEETS」としてまとめられています。ReBORNキャンペーンの「権力より愛だね」というコピーが示すように、愛されるブランドになることは、「権力=ステータスの象徴」だったクラウンと消費者の距離感を縮めることにつながったのです。

「歴代のクラウンにはその時代のリーダー像を反映しているつもりです。だから、企画会議のときも、『鉄拳制裁で恐れられた川上哲治より、選手にイジられながら世界一になったなでしこジャパンの監督(佐々木則夫氏)のような存在にしたい』って話し合っていました。孤高のカリスマより、愛される“イジられキャラ”を目指したんです」(前出・土橋氏)

 実は、すでに消費者から一定の信頼を勝ち得ているラグジュアリーブランドは、意外なほど“イジられる”ことに向いています。前出の河尻氏が自動車業界を例に挙げます。

「高級車ではメルセデス・ベンツが昨年、『Invisible Mercedes』というキャンペーンを行いました。車体の全面にLEDライトを付け、リアルタイムで撮影した外の風景を投影することで、まるで車が透明になったかのように見せるんです。そのことで『環境への負荷がゼロ』であることをアピールしているわけですが、そんな自動車が街を走るとみんなびっくりして撮影しますよね。その動画がネット上で拡散されましたから、これも“サステナブル系イジり型”のPRと言えそうです。あと、中国のフォルクスワーゲンが一般ユーザーから新車のコンセプトモデルのアイデアを募集して、それをCGで再現した映像を「People's Car Project」としてYouTubeにアップしています最近では、英国ホンダのトリックアートを取り入れた動画も話題ですね」

写真を拡大
メルセデス・ベンツの『Invisible Mercedes』キャンペーンでは、サステナブルであることと、“イジられる”ことをメッセージとして両立させた。

 権威的なカリスマは尊敬されても、“イジられる”ことはありません。サステナブル時代を迎えたラグジュアリーブランドはカリスマであることよりも、誰からも愛される“イジられキャラ”であることを選び始めているのです。

 さて、ここまで「ソーシャルメディア」と「サステナブル」という2つの潮流が、ラグジュアリーブランドに起こした大きな変化について見てきました。次回以降は変化に対応しつつある各ブランドの実例を深く掘り下げることで、ラグジュアリーの未来像に迫っていきます。

 

【連載バックナンバー】
第1回 ラグジュアリーブランドは、もう隠さない!