こうした一連の動きは、サステナブルな志向が重要視される現代社会の要求にどうやって応えるべきかブランド側が試行錯誤している様子を示しています。ですが、ラグジュアリーブランドのなかには、もっと根源的なかたちで新たな価値観を打ち出していこうと考えるブランドが表れ始めています。

トム・フォードが提唱する“サステナブル・ラグジュアリー”って?

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ファッション界の革命児として業界の中心に君臨し続けたトム・フォードだが、グッチとイブ・サンローランを担当した10年間で、トレンドを追い続けることに限界を感じたという。(写真:Wireimage)

 そのひとりが、グッチ、イブ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターを歴任し、現在は自身のブランドを手がけるトム・フォード。名実ともにラグジュアリーを代表するクリエイターである彼は、移り変わりの激しいファッション界のトレンドの体現者でもありました。

 1994年に経営不振にあったグッチのクリエイティブ・ディレクターに就任したトム・フォードは、セクシャルな感性をこの古典的なブランドに持ち込み、ミュージシャンや俳優たちの熱狂的な支持を得ました。歌手のマドンナが1995年のMTV Video and Music Awardsで自分の衣装について説明しながら、「グッチ、グッチ、すべてグッチよ!」と叫んだことが象徴的です。

 卓抜したマーケティングのセンスによりトレンドを先読みし、ファッションショーのサイクルである半年ごとにまったく新しいスタイルを生み出していく。結果、トム・フォードの就任から10年も経ずに、グッチの売り上げは約2億3000万ドル(94年)から約30億ドル(03年)と約13倍にも達しました。

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トム・フォードがデザインしたグッチを着て、1995年のMTV Video and Music Awardsに登場したマドンナ。彼のセクシー&グラマラスなファッションセンスは、感度が高いアーティストたちから熱狂的に支持された。(写真:Wireimage)

 しかし彼は今、そんな自分が作り上げたファッション業界のスタンダードに疑問を持っています。ブランド「TOM FORD」が初めて女性向けのコレクションを発表することを伝えた米国版『VOGUE』の記事「Mr. Ford Returns」には、新たなブランドコンセプトに関する次のような発言が掲載されています。

「女性たちができるだけ長く着られる服を作りたかった。10年、20年が経っても、自分の娘に渡せるような服をね。クローゼットを開けたとき、僕の服がヴィンテージワインのように見えたら素敵だよ!」

 さらに、トム・フォードがデザインしたグッチを熱狂的に買い求めてきた“グッチ・ガール”たちに対しても、「彼女たちは流行を追いすぎていた」と一刀両断。コレクションの対象年齢を、「25歳から75歳」と定義しているのです。もはや“トレンドの先読み”は、どこかへ行ってしまいました。