だがモバイルのイノベーションに向けたフェイスブックのアプローチは、「ユーザーに提示できる、いちばん重要なことは何だろうか」という問いかけから始まる。「人が携帯を使っている時の注意力の範囲や持続時間は、PCの場合とは異なります。我が社はユーザーに、面白いもの、彼らの関心と一致するものを提供し、迅速なアクションを可能にするユーザー体験を提供する必要があります」とアロノウィッツは言う。「(携帯電話を使っている)ユーザーは、机に向かっている時のように集中してはいませんから」

 フェイスブックはモバイルのイノベーションを促進するために、社内にモバイルデザインのシンクタンクをつくっている。2012年に創設されたこのチームは、フェイスブックのすべての部分に適用されるモバイル体験のベストプラクティスを考案し、1~2年先を見据えた戦略を携えている。さらに、モバイル戦略を熟知したデザイナーをすべての製品チームに配属した。

 アロノウィッツによれば、フェイスブックは「状況に合わせた共有」(contextual sharing)の体験を、より精密なものにするよう取り組んでいる。つまり、外出先で携帯電話から、ある情報について質問したり答えたり、情報収集したりできるようにすることだ。たとえば休暇中のユーザーが、(携帯電話のフェイスブックを通じて)友人にリアルタイムで道順を尋ねたり、観光スポットについてアドバイスを求めたりするとしよう。この体験をよりよいものにするにはどうしたらよいか、同社のエンジニアとデザイナーは常に自問している。

 ただし、アロノウィッツはモバイルのイノベーションに関する一般的な秘訣として、こうも指摘してくれた。モバイルのインターフェース作成を通じてデザインに関して学べることはすべて、ウェブサイトのデザインにも適用でき、無駄のない魅力的なウェブデザインの構築に役立つという。

 また、企業は一般的に、モバイルへの通知が適切かどうかを真剣に考える必要があるという。銀行であれば請求書の支払期限のお知らせ、その他の企業であれば値引きやお得なサービスのお知らせを、テキストメッセージやeメール、その他の方法で携帯電話に配信する場合だ。「フェイスブックで私たちは非常に多くの通知を扱っていますが、これらの情報で携帯電話をあふれさせてはならない、ということを学んでいます。うっとうしくなりますから。私たちは常に『どの情報を通知すべきか』を自問しています。モバイル体験のあらゆる部分について考えることが重要です。『どの体験を提供すれば、どんな場合でもユーザーにとって最も有益となるだろうか』と考えるのです」。同時に、(特定の状況にある)ユーザーの心をつかむ体験を十分に提供することも、最大の課題であるという。たとえば通勤中のユーザー、あるいは空港でフライトを待っているユーザーを満足させる方法だ。

3.職場環境を日々、物理的にかきまぜる
「物理的な環境は、考え方や感じ方に影響します。オープンな雰囲気とコラボレーションを促進したければ、職場にそれを反映させなければなりません」とアロノウィッツは言う。このような意見は、間仕切りのないオフィスが当たり前となった現代では、あまりに明白なようにも思われる。しかしフェイスブックがほかと違うのは、エンジニアリングやマネジメント等のチームが、新たなグループに直接参加して新鮮なアイデアを生み出すことを重視して、日々頻繁に席を移動することだ。固定席の間を往復するのではなく、日常的に席ごと動き回るのだ。

 職場環境を常に流動的に保とうとする取り組みと関連して、フェイスブックは現在本社を拡張中である(設計はフランク・ゲーリー)。ゲーリーは著名な建築家であるため、皮肉屋はきっと、これは単に注目を集めるための行動にすぎないと言うだろう。だが彼のデザインは、きらびやかなお飾りではない。同社とゲーリーは、広くて開放的なだけでなく、くつろげるミーティング・エリアを多数備えた空間を設計している。色彩は、フェイスブックの現在のオフィスの色調を反映して、「住まいのようで落ち着きます」とアロノウィッツは言う。このため仕事中も居心地のよさと安らぎを感じることができる。新たな空間には可動式の壁と備品が備えられるため、スタッフは机や椅子を自由に動かすフェイスブックの現在の慣習に基づいて、機敏に行動し容易に頭を切り替えることができる。


HBR.ORG原文:Inside Facebook's Internal Innovation Culture March 7, 2013

 

リーナ・ジャナ(Reena Jana)
ニューヨーク市を拠点とするフリーランスのジャーナリスト