これら2つの事実をつなげて考えると、称賛よりも批判のほうが効果的に思える理由が見えてくる。

 あなたの部下が普段から行っている、重要でやや難しめのタスクについて考えてみよう。10点満点で評価したところ、過去1カ月間のパフォーマンスの平均値は5点にしかならなかったとする。そのため、あなたは彼の業務を観察し始め、業績評価のたびにポジティブまたはネガティブなフィードバック――批判もしくは称賛――を与えることにした。

 パフォーマンスは平均値を中心に変動する。このため、部下のパフォーマンスが平均以下であった場合、たとえあなたがフィードバックを与えたり措置を講じたりしなかったとしても、その後のパフォーマンスは向上する可能性が高い。平均値へと自然に回帰するからだ。しかしあなたは、自分が批判したからこそ改善したのだと誤解する。そして、人は一番最新の情報を重視するがゆえに、この誤解は確信へと変わる。

 パフォーマンスが平均以上であった場合も同様だ。あなたが何のフィードバックや行動をせずとも、次回にはパフォーマンスの低下が見られる可能性が高い。前述のように、結果は平均値へと回帰するからだ。しかし、それは称賛の後に起こるため、あなたは称賛がパフォーマンス低下の原因であると結論づけることになる。

 人はこれらの明白な関係を意識的には把握していない場合でも、直観的には認識している。その結果、称賛よりも批判のほうがはるかに多くなりやすいのだ。

 残念ながらこれでは、部下の平均値を底上げするという目標は達成できない。過失への執拗なフォーカスよりも、陽性強化――強みや長所を特定し伸ばすこと―― のほうがよい結果を生み出すということが、数多くの証拠によって示されている。これは重要である。改善には、ポジティブなフィードバックが必要だ。相手の長所を認め伸ばすことは、足りないところを指摘するのと同じように重要なのだ。そして、称賛には効果がないように見える(前述したような)理由を理解しておく必要がある。そうすれば、称賛を差し控えることもなくなる。

 経験に惑わされてはならない。経験から得られる真の教訓は、必ずしも一目瞭然ではない。多くの場合、それらの教訓を見つけるためには熟考と内証、そして分析が必要となる。何が実際に起きているのか、その原因は何かを完全に理解してはじめて、最善の選択を下すことができる。つまりは、称賛も、批判と同様に素早く行うべきということだ。

 

HBR.ORG原文:Why Does Criticism Seem More Effective than Praise? April 5, 2011
 

リンダ・A・ヒル(Linda A. Hill)
ハーバード・ビジネススクールのウォーレス・ブレット・ドナム記念講座教授。経営管理論を担当。主な著書にBeing the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。

ケント・ラインバック(Kent Lineback)
著述家。リンダ・ヒルとの共著Being the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。