あるカップルに関するボルガーの研究を見てみよう。カップルのうち1人は、司法試験(非常に大きなストレスを伴う)に向けて勉強中である。もう1人がサポートを与えたが、それを受ける側(司法試験の勉強をしているほう)がそのことに気づかなかった時、その効果はずっと明白なものとなったという。こうした暗黙の「目に見えない」サポートが生じたのは、与える側が「相手の話を聞き、心を癒している」と報告し、受ける側が「何のサポートも受けていない」と報告された場合だ。こうした目に見えないサポートが行われると、受ける側の不安や気分の落ち込みが軽減された。とくに試験の直前に、ストレスが最高潮に達している時に効果があった。

 ボルガーの研究室で行われた別の研究も見てみよう。被験者の女性たちに、人前でスピーチを行うというストレスの大きい課題が与えられた。そして実験者(そうであることは被験者には知らされていない)が、2つの方法でサポートを行うことにした。1つ目の方法では、スピーチを準備している被験者に対して「あなたには助けが必要だ」と指摘し、スピーチのさまざまな側面に関して明示的にアドバイスを行う。2つ目の方法では、被験者に「あなたには助けはさほど必要ない」と告げる。しかし、実験者自身のスピーチでもっと改良できる部分について話したり、スピーチを改善するアイデアを挙げたりする。ここでも、暗黙のサポートのほうが被験者の不安を和らげた。実験者が間接的に助言を与え、被験者より低い立場(被験者よりもスピーチが下手であること)を示すことで、被験者の自信を支え、自主性や自尊心が脅かされることを避けたのである。

 必要なのは、サポートを与えたい相手に「あなたなら、この状況を乗り切れるはずだ」という自分の信念を伝えることだ。また、自分自身を間接的な事例として、どのように失敗する可能性があり、どのように成功を掴めるかを示すことだ。そうすることにより、当人が有能であると伝えつつ、同時に助言を与えることができる。その結果、相手の自律性を尊重し、同時に不安を減らすことができるのだ。

 なお、人の感情に対するあなたの影響力は、あなたの社会的な立場によっても変化するということも覚えておいてほしい。相手との距離が近く親密であれば、あなたが行う感情制御の影響力は強まる。権力のあるポジションにいるのであれば、下の人たちはあなたの言動に敏感になり、それを真似る可能性が高くなる。しかし同時に、あなたの権威ゆえに、彼らは高度のストレスと恐怖感を抱くことにもなるのである。

 直接的に感情面のケアを提供したい場合でも、いきなり問題解決を図ろうとしたり、自分に頼れば大丈夫だと告げたりするのは考え直したほうがいい。物事はきっと好転するはずだ、と当人が自発的に思えるように後押しをしよう。助けを求められた時こそ手を差し伸べること、アドバイスを間接的に与えることを意識しよう。職場で大変な日を過ごしている相手がプレッシャーに屈しているように見えても、それには触れないでおくことだ。


HBR.ORG原文:Support Your Team… Quietly November 22, 2012

 

ケビン・オクスナー(Kevin Ochsner)
コロンビア大学准教授。同大学の心理学部大学院ディレクター、および社会認知脳科学研究所の責任者。