ユニ・チャームに学ぶ
新興国ボリュームゾーン開拓法

2

 しかし、通常のパンツ型の紙オムツは、寝かせて替えるテープ型の紙オムツよりもさらに高額だ。広く普及させるためには、価格を大幅に見直す必要がある。ユニ・チャームは、素材や製造を工夫することで、パンツ型オムツを従来品の半分の値段にまで下げることに成功した。このパンツ型紙オムツ「マミーポコ」は、普通の紙オムツよりも安くなったため定番商品となり、いまやタイやインドネシアでは、オムツといえばマミーポコというぐらい浸透している。

 顧客の潜在ニーズにこたえ(スマート)、かつ財布のサイズに合った(リーン)商品を開発する。このような事業モデルを、筆者は「スマート・リーン」と呼んでいる。ユニ・チャームは、この事業モデルを武器に、アジアの新興国市場を、次々と開拓していったのである。

「MOP」を起点とする
リバース・イノベーション

 日本に腰を据えている企業から見ると、アジアの新興国市場は二階層に見える。富裕層とそれ以外だ。進出当初のユニ・チャームも同様だった。だから、まずは富裕層を狙った。

 しかし、現地に密着していると、じつは市場は、富裕層、中間層、ボトム層の三つに分かれていることに気づく。ボトム層は、ボトム・オブ・ザ・ピラミッド(BOP)とも呼ばれ、巨大な未開拓市場として注目されてきた。しかし、非営利のNPOが社会貢献として行うのならともかく、ビジネスとしてはまだまだ狙いにくい。

 新興市場での主戦場は、実は中間層(MOP:ミドル・オブ・ザ・ピラミッド)だ。そこはすでに市場化しており、かつ、経済成長とともに、今後BOP顧客がMOPにずり上がってくることが期待される。ユニ・チャームのように、現地の顧客目線で、MOPに対して本腰を入れて取り組むことによって、この次世代のボリュームゾーン市場を掘り当てることが出るである。

 日本をはじめとした先進国では、どうしても高品質、高付加価値へと、より高く、さらに高くという競争になりがちだ。これでは、消費者のニーズを超えて高止まりしてしまい、いずれ品質や付加価値が低い次世代商品に追いやられてしまう。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が、「イノベーターのジレンマ」と名付けた現象である。

 一方、新興国向けとなると、まったく違った発想が求められる。中間層と言っても、年収は1,500~2万ドル。ただし、単純に安かろう、悪かろうでは、新興国ですらもう売れない。本当に求められている機能は高く、それ以外はそぎ落とすことで価格を半額にするようなイノベーションが必要となる。「イノベーターのジレンマ」に打ち勝つためにも、新興国に照準をあてたイノベーションを仕掛けることが、ますます重要になってきている 

 最近、「リバース・イノベーション」が注目を集めている。新興国向けに開発した商品を、リバース、つまり逆流させて先進国に投入する戦略を指す。GEが、ジェフ・イメルトCEOの指揮のもと、インドや中国で開発した簡易型で廉価版の医療機器を、欧米に逆上陸させて大成功したケースがよく知られている。

次のページ  「そこまでやるか」までやる 徹底した現場主義»
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー