解決策は、垂直統合ではない。バリューチェーンにおいて最終的に製品の品質を保証し、ユーザー体験を規定するプレーヤーになることだ。さらに、バリューチェーン内の参入業者の互換性を管理する(参入業者の固定化を避ける)ことも必要だ。自動車メーカーが業界内で最大の分け前を維持してきたのは、自部門をみずからコントロールしてユーザー体験を築いてきたからである。

 ベイン・アンド・カンパニーは1990年代に、自動車業界はやがてコンピュータ業界のように、巨大なサプライヤーがのし上がり幅を利かせるようになるだろうと予測した。デロイトもまた、電気自動車の出現により統合的なエコシステムが崩壊し、価値が移転するだろうと予測している。

 しかし我々から見れば、こうしたことは起こりそうにない。むしろ大方の予測に反して、アップルは今、コンピュータ業界をますます自動車業界に近づけている。つまりは階層的で、供給ネットワークを厳しく管理し、技術の統合には鋭い目を向け、最終顧客に対する差別化を重視するという方向性である。アップルはブラックベリーと違って、堅実な価値提案のみを重視してきたのではない。エコシステムを管理し、その価値を自社に引き寄せることに注力しているのだ。

 もちろん、既存の大手企業はエコシステムの中心にいれば、物事を有利に運び、ポジションを守りやすくなる。しかし新規参入者が、価値の移転に注目することで業界をいかにひっくり返せるかを考えてみるのも、興味深い。

 彼らがエコシステム内で価値を引き寄せるには、次の方法がある。頼れる外注先になること。既存の大手企業のニーズを利用して成長すること。辛抱強く食物連鎖の階段を昇って、ソリューション・プロバイダーになること。より広範な市場で足がかりを得るために、標準化を巧みに利用する(既存の大手企業の製品をコモディティ化させる)こと。野心的な新規参入者はこうした方法で、下請業者から業界の巨人へと成り上がったファーウェイ(華為技術)やホンハイ(鴻海)のような企業に続くことができるかもしれない。

 戦略は複雑化する一方であり、単なる分析よりも目前の問題解決に取り組むほうがはるかに困難であることは否定できない。しかし、業界内の価値の移転を促す要因にもっと注意を向ければ、対応が後手に回る前に戦略を再考できるかもしれない。


HBR.ORG原文:Blackberry Forgot to Manage the Ecosystem August 19, 2013

 

マイケル・G・ジャコバイズ(Michael G. Jacobides)
ロンドン・ビジネススクール准教授。ドナルド・ゴードン卿記念アントレプレナーシップ・アンド・イノベーション講座を担当。