スマート・リーンによる限界突破

 これらほとんどのケースにおいて、それぞれの世代交代を促したのは新興勢力でした。前時代の覇者は、まさにクリステンセンの言う「イノベーションのジレンマ」の金縛りの中で、どうしても守勢を余儀なくされてきたのです。だとすると、イノベーションを起こすには、常に、コスト構造が軽いアタッカー型の新興プレーヤーでなければならないのでしょうか。

 しかし実際には、既存事業で成功しながら、自ら次々にイノベーションを仕掛けていく企業が少なからずいます。たとえば、任天堂、セブン-イレブン・ジャパン、ユニクロといった企業が代表例です。それぞれのケースの成功の本質はこの後すぐに検証しますが、これらの日本企業には重要な共通点があります。

 それは、いずれの企業も、顧客が本質的に求めている価値を常に追い求め、コスト構造を徹底的に絞り込み続けるという点です。価値(スマート)軸とコスト(リーン)軸を同時に追求することから、「スマート・リーン」型と呼ぶべき事業モデルです(図2)。このモデルは、価値とコストの積である価値双曲線を一挙に上方に押し上げる点において、いったんコストに基軸をおき、時間をかけて価値軸を上げていくクリステンセン・モデルよりも、はるかに破壊的な効果があるのです(3)。

 では、具体的な事例を通じて、スマート・リーン・モデルの実際をみてみましょう。