言うまでもなく、すべての企業が自社の「本業」を持っています。その本業の周りには、かならず「拡業」の可能性が潜んでいます。自社の本質的な強み(DNA)を見据え、自社の顧客やパートナーなどの外部資産も最大限に生かしながら、拡業による成長を加速させる。その過程で自社のDNAをより研ぎ澄まし、本業そのものもさらに強化し、深化させていく。このように、自社のDNAを基軸とした本業と拡業の良循環をつくることによって、いかなる企業も、ユニクロばりの地に足がついた持続的な成長を実現できるのです。

足腰を鍛え、跳躍せよ

 多くの日本企業が、高度成長時代からバブル期にかけて、高付加価値路線のもとで高コスト体質になってしまいました。価値とコストのバランスを取り戻すためには、足腰の筋肉を鍛えなおす一方で、より研ぎ澄まされた価値を目指して、力強くジャンプする必要があります。

 景気後退局面に突入し、ほとんどの日本企業が、徹底した無駄遣いの削減と投資の切り詰めに余念がありません。ただし、多少当面の止血効果があるにせよ、それだけでは成長に向けた本質的な解にはつながらないのが実情です。

 欧米の先進企業では、まず、本業において固定費を削ぎ落として筋肉質になったうえで、成長分野への投資を加速する「Shrink-to-Grow」というV字回復のシナリオが、企業変革の定石です。しかし、この手法は固定費のリストラが困難な日本企業の風土には合わず、飛躍的な成長も期待できません。

 日本企業にとっては、経営資源を本業における白地市場(たとえば、新興国市場)や本業周辺の拡業に大胆にシフトすることによって、筋肉質化と成長を並行して推進する「Shrink & Grow」型のシナリオこそが、企業変革の定石となるでしょう。ここでも「守りか攻めか」というデジタル思考ではなく、「守りも攻めも」という非デジタル思考が求められているのです。

 ユニクロは、フリースブーム終焉後の減収減益の危機を、一時「守り」を固めて乗り切ろうとしました。しかし、縮み指向の打ち手を性急に繰り出すことによって、逆に傷口を深めていったのです。そこで、いったんは退陣していた柳井氏が社長の座に返り咲き、「攻めと守り」を矢継ぎ早に仕掛けていきました。本業においては、「スクラップ&ビルド」を加速することによって店舗の体質強化を進めた一方で、本業の海外展開、国内の関連事業の拡大、グローバル・ブランドの買収など、「拡業」に経営資源を大きくシフトすることによって、成長を一気に加速していきました。

 ユニクロの「攻め」は、初めから成功したわけではありません。後述するように、海外事業も国内外のM&Aも、試行錯誤の連続でした。失敗の最たる例は、「エフアール・フーズ」です。新鮮で安全な野菜や果物の直販を目論んだものの、流通経路や規制の問題に阻まれて、1年半で撤退。20数億円の経費を費やしました。柳井CEOは後にこう述懐しています。

「農業では、我々が今まで培ってきたユニクロのノウハウや人材が活きない。我々の強みは、繊維製品を自分たちで作って自分たちの手で売っているということである。その強みが活きる世界でないとユニクロ式の即適用というわけにはいかないようだ。革新的過ぎて失敗した、ということなのだろう(3)」(*太字は筆者)