答えは自らが握っている

 ユニクロやトヨタを引き合いに出すと、「普通の会社はすぐに真似ができるわけではない」と反論されることがしばしばです。では、普通の日本企業は、どうすればいいのでしょうか。

 広い市場に投網をかけるようなマーケット調査を繰り返したところで、顧客の真の潜在需要は浮かび上がってきません。そもそも顧客がその企業に期待することは、他の企業に期待することとは異なるはずです。ユニクロのように、販売やサービスなどの顧客接点に立ち返り、課題の発見、解決、実践、再観察のループを繰り返すことによって初めて、身近に眠っている市場の掘り起こしが可能になります。つまり、すべての企業にとって、自社が築き上げてきた顧客との接点こそが、顧客価値を深掘りするうえでの最大の資産となるはずです。

 また、ほとんどの企業が、アジアに生産や販売の拠点やパートナーを持っています。これらの拠点やパートナーの知恵を基軸に、既成概念にとらわれない斬新な事業モデルを現地で実験し、そこでの成功を他の地域に横展開するという、ユニクロ型の成長のパスが描けるのではないでしょうか。ここでも自社が築き上げてきたパートナー基盤からの広がりが、コスト構造を組み替えるうえでの最大の資産となるはずです。

 既存事業が縮退する中で、多くの企業が、新規事業や新たな市場に成長の望みをつないでいます。しかし、既存の優良資産を売却して新たな資産を買収するという、欧米型の事業ポートフォリオの組み替えができる日本企業はまれです。だとすると、たとえどんなに有望に見える市場だとしても、まったく新しい領域においてゼロベースで事業が成功することは、ほとんどありえません。そのような「飛び地」ではなく、かといって既存の事業の延長でもない、自社の本質的な強みを応用しうる「拡業」ともいうべき中間領域を見極めることが重要となります。まさに自社の本業の周辺にこそ、自社ならではの次世代の成長の種が眠っているのです。

 そもそも、すべての企業は、これまでの競争で勝ち残ってきた過程の中で、その企業特有の強み(DNA)を醸成し、磨き上げてきているはずです。しかし、本業の中にどっぷりつかっているだけでは、この自社のDNAの本質が研ぎ澄まされてきません。自社の殻を破るような「拡業」型の成長分野を見極め、そこで異質なゲームに挑むことによって、逆に自社の強みが純化されていく。ここでも「本業対拡業」ではなく、本業と拡業の両立を目指す非デジタルな思考が求められます。

「できれば10年間で売り上げを10倍にしたいと思っていますから、年に20%成長させられるものをつくらないといけない」と、ユニクロの柳井CEOは語ります。「そのためには、成熟して停滞している日本市場だけじゃなく海外にも出るし、ユニクロだけじゃなく自分たちの強みを生かせる別の業界にも出る。これまでも海外に進出したり、関連業界に出て行ったりしましたけど、そういうのを通じて、自分たちがどういう会社でどういう強みを持っているのか、よくわかったというわけです」(2)