5.新しい美意識
 ファーマーズ・マーケットが脅威なら、ダヴの「リアルビューティー」キャンペーンはきっとそれ以上だろう。これは美について、そして美を象徴・表現する製品についての女性の考え方が、根底から変わりつつあることを示すものだ。ユニリーバは、いくらか躊躇し後ずさりしつつもこの変化を受け入れているが、P&Gは苦労している。「顧客はボスである」というA・G・ラフリーの考え方はよく知られている。しかしリサーチ担当者がそのニュアンスを共有しているかどうかは、定かではない。1つの大きな課題は、ミレニアム世代(1970年代後半~1990年代前半生まれ)への移行だ。この世代は美容製品にとても親しんでいるが、美に対する彼女らの考え方は、今後数年で完全に変わってしまう可能性が高い。P&Gはこの変化を受け入れる用意ができているだろうか? それとも戦略を打てずに驚きの声を上げ、「こんなことが起きるなんて、わかるはずがない!」と言うのだろうか?

 P&Gは、これらのブラック・スワンをずっと見失うわけではないだろう。しかし、たとえ見えたとしても、これらの変化は企業文化を成す根本的な前提に挑みかけるだろう。適応するのは容易ではないはずだ。

 と言っても、悪いニュースばかりではない。ブラック・スワンを捕らえることができれば、カテゴリーや製品のイノベーションを起こすチャンスに変えることができる。イノベーションは、ラフリーの得意技の1つだ。彼がこの難題に立ち向かう知的敏捷性を備えていることは間違いない。本当の疑問は、彼が全社を道連れにできるどうかだ。全従業員を引き連れて本社前の広場を行進できるとしたら、それは良い兆しだろう。


HBR.ORG原文:The Black Swans Circling P&G June 21, 2013

 

グラント・マクラッケン(Grant McCracken)
マサチューセッツ工科大学研究員、著述家