岡田先生はどちらのスタンスに注目されていますか。

 私は社会性をゴールの変数の1つとする考え方、つまりより現状の戦略理論とのかい離が大きい方向性を敢えて選択していこうと思います。その上で、社会性と経済性を融合させる企業資源は何かと考えています。私はこれを「社会経済的収束能力(socio-economic conversion capacity)」と呼んでいますが、自社の持っている社会性と経済性を社外の社会性とどう共鳴させ、自社の経済性と社会性を高められるのかが、企業のパフォーマンスを左右するという仮説を想起しています。

社会的価値の計測は難しくはないでしょうか。

 あらゆる業種業界を横断して社会的効果を計測するには相当の工夫が必要です。社会的価値評価の手段には、国際機関などの開発セクターによるもの(例えばIRISなど)多種多様に存在します。これを今までの戦略論が慣れ親しんできた株価やキャッシュフロー、会計上の指標とどう統合させていくかは大きな課題ですね。

社会性と一言でいっても、そこには様々なタイプがありそうですが。

岡田 正大氏

 戦略理論で問題となる社会性は道義的な責任からくるものではありません。経済性とシナジーを生む社会性です。企業の社会責任の古典にキャロルの分類があります。その定義によれば企業の社会的責任には4段階あり、経済的責務、法的責務、倫理的責務、裁量的責務です。3つ目までは、その責務を果たさなければ、非道義的・違法・非倫理的だとみなされます。最後の1つ、裁量的責務こそが個別企業で達成度に差が出るところです。この個別企業ごとの異質性は戦略理論の前提と整合します。この裁量的領域で社会性と経済性を融合させ、企業が独自性を出していく余地があるはずです。

 将来を見据えると、戦略理論における社会的価値がどれほど重要であり続けるかはわかりません。急速に開発途上国が発展して経済格差がなくなってくると、社会性への意識も低下していくかもしれない。逆に先進国市場であれどこであれ、地球上で商売をするには、経済性と社会性の両立が必須と考えられる世の中になっていくかもしれません。

【注】
(1)邦訳「共通価値の戦略」DHBR2011年6月号、マイケルE・ポーター、マークR・クラマー
(2)邦訳『ネクスト・マーケット[増補改訂版]』英治出版、2010年

 

【連載バックナンバー】
ポーターVSバーニー論争のその後を考える(前編)