――国内市場に関してですが、若者に対してはどのようなアプローチをお持ちでしょうか。

 確かに、1番頭が痛い部分ですね。若年層の動向を分析し、興味を持つ製品を開発する。そして新たな価値を生み出し、既存のものでもニーズに合ったアピールの仕方を考えなければと思っています。現在の商品群では、創業120周年を記念して発売した梅仁丹が若者向けの商品にあたります。

――環境変化が早くなり、せっかく築いた価値が模倣されたり、すぐに通用しなくなることはありませんか。

 ですので、新しい価値をつくるときに、単なる時代迎合にはならないよう注意しています。簡単に模倣できないだけではなく、普遍性があるかもよく検討しています。また、新たな価値を生み出すということは、ゼロからすべてをつくり出すことだけではありません。古いものの中にも、新しいものはある。いったん止めたものを再評価することも含めて、価値を生み出すようにしています。

 拙速な拡大を目指さないため、傍からみると鈍重にみえるかもしれません。しかし、宣伝にお金をかけて解決しようとする方針は今後もとりません。時間をじっくりやっていくのがうちの会社の取り組みです。

――他にも事業戦略を練るうえで、何か心がけていることはお持ちでしょうか。

 正々堂々と真正面からぶつかることで、結果が出ると考えています。当たり前ですが、まっとうであること大切にしています。そして他社に比べて優位だった事業であっても、常にその見直しを欠かさないことです。

 真正面からぶつかるということは、お客様と向き合うことを意味します。社会のニーズを汲み取り、お客様に向き合うことを止めてしまえば、知らないうちに手法が古くなり、古いことにしがみつきがちです。例えば、私が就任する以前はネットでの商品販売率が異様に低かった。ハガキと電話で販売するから、ネットになんて頼らなくていいと、まともに取り組んでいなかったのです。

 自分の企業の伝統的な物差しではかると、現実とかみ合わなくなってくる。社内のルールで見ないで、外からの視点を大切にしなくてはいけない。前例・慣例に引きずられることなく、現実をしっかり認識しなくてはいけないのです。

――反対に、決して変えてはいけないものは何ですか。

 周囲と比べて比較優位に立つものは、絶対に変えてはいけません、例えば仁丹のマークである大礼服に対する誇り、伝統に対する誇りは間違っても捨ててはいけません。過信や傲慢はいけませんが、仁丹という他を圧倒するブランドを築きあげたという自負は残すべきです。優位の部分と劣勢の部分をしっかり区別をつけて判別していく。劣るところは改善し、優位を築いているところは伸ばします。

 改めて社員には、創業者の開拓スピリッツに気が付いてほしいと思っています。立派な会社にいるのだから、立派にしなければならないという、責任感や誇りを持ってほしいですね。

 

【連載バックナンバー】
森下仁丹駒村純一氏に聞く「伝統に胡坐はかかない(前編)」