こうした情報の収集と分配は競争優位を促進したが、それを行うには相当な規模が必要だった。企業にとって、販売時点の情報を社内の調達チームに伝え、さらにはさまざまな製造のネットワークにまで伝えるのは、容易なことではない。こうした業務を調整できる経営資源を持った企業だけが、メリットを受けられたのだ。

 しかし、このような調整上の規模の優位性をもたらした技術は、どんどん低価格になり、また広く行き渡るようになっている。以前は、中国のプラスチック成型工場で製品をつくるには、現場で取引をまとめる人間、独自の情報システム、そしてまとまった生産数量を保証できる能力が必要だった。しかし、今日ではアリババ(Alibaba.com)を使えば済む。また、以前は24時間営業のコールセンターを運営できるのは大企業だけだったが、今日では小さな企業でもグローバル・レスポンス(コールセンター業務を代行する会社)などを活用できる。それだけでなく、クラウドサービスにより、最小規模の企業でも最上級の顧客管理システムを利用でき、フルフィルメント(商品販売における一連の管理業務)ソフトや、会計プログラムも利用できる。今日では、調達における規模のメリットすらも危険にさらされている(共同購買サービスを提供するOrderWithMeなどがある)。

 安定的な利益が存在するところには起業家が集まる。かつては、情報システムにはコストがかかり複雑であったため、規模による利益が確保できた。そうした要因により、他社の台頭が阻まれ、小さな企業が団結して規模を活かした購買や製造を行うこともできなかった。しかし、低価格でアクセスしやすいIT技術が入手できるようになって、すべてが変わりつつある。規模による優位性は陳腐化しつつあり、最小効率規模はどんどん小さくなっているのだ。

 では、これまで規模に頼ってきた企業は何をすべきなのか。何より、すべてが陳腐化するという現実を受け入れること。最大であることに依存しない戦略――すべての競合が最大企業のような優位性を持つという前提のもとに、模倣が難しく、業界で効果を発揮する一連の手法から成る戦略――を開発するのだ。顧客をよく知ろう。将来についてのビジョンを開発しよう。人々が欲しがる物をつくろう。誰もが規模を手に入れられることを認識しよう。

 ニロファー・マーチャントは2012年2月のHBRブログで、「ポーターのバリューチェーンはもはや機能しない」と述べた。「ソーシャルの時代」にはポーターのコンセプトはもはや意味を持たない、というその意見に私は反対である。実際は、バリューチェーン・モデルを理解することで、ニロファーのソーシャル戦略がより価値を持つ理由が明らかになる。競争優位のカギとしてポーターが唱えた持続可能な差別化は、もはや規模によっては実現できない。ニロファーらが主張する、「迅速で流動的なビジネスモデルが競争優位を築く」という点には同意するが、「新たな競争優位はソーシャルでなければならない」という点には反対だ。新たな競争優位は、独自の知的資産や流通チャネル、革新的なサービスモデルなど、さまざまなものによって獲得できる。

 本記事のポイントは、規模の陳腐化への対処方法を説明することではない。規模だけでは十分ではないと知るうえで、過去の理論がなぜ役立つかを説明することだ。

 規模の陳腐化に適応するのは、簡単ではないだろう。変化への適応が簡単であることは決してない。しかし確かなのは、それが不可欠であるということだ。


HBR.ORG原文:The Commoditization of Scale March 26, 2012

 

マックスウェル・ベッセル(Maxwell Wessel)
ハーバード・ビジネススクールのフォーラム・フォー・グロース・アンド・イノベーションの上席研究員。