ファーストリテイリングに学ぶ
「緊密な連携」による新結合

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異業種との緊密な連携のために必要な、
資産の3枚卸し

 FRは、バングラデシュに限らず、市場開拓において、異業種のパートナーの力を徹底的に活用している。

 国内では、ロードサイドの物件を大量に開拓する際に、大和ハウスの力を借りている。タイやインドネシアでの事業パートナーは、それぞれの市場に深くかかわっている三菱商事だ。また、韓国ではロッテ、シンガポールではウィンタイ、フィリピンではSMなど、現地の有力資本とJVを組んで、市場深耕に余念がない。

 このようにFRにおいて、「X(クロス)カプリング」は事業モデル構築力と市場開拓力の原動力になっているのだ。異業種プレーヤーの知恵と自社の知恵を掛け合わせる(クロス)することで、異次元の「S4の経済」(Economies of Skill, Scale, Scope and Speed)を獲得することを目指す。

 その際には、資産を「3レイヤー」に層別することが有効だ。

 第1は、「競争」レイヤー。自社の本質的な強みとなる資産を、学習優位のコアとして磨きをかける。FRでいえば、FR独自の商品開発力や店舗における顧客への体験価値提供力だ。自前主義を捨て、何を自社に残し、何を外だしすべきかを見極める。ノウハウ、ネットワーク、ブランドなど、スキルの経済をもたらす無形資産が対象となることが多い。

 第2は、「共層」レイヤー。自社で取り込むのではなく、他社に任せるべき資産。FRでいえば、東レに期待する素材開発力やモノづくり力だ。設備、プロセス、インフラなど、規模の経済が働く有形資産が対象となることが多い。

 第3は、「協創」レイヤー。自社の強みと他社の強みを掛け合わせることにより、イノベーションを創出する。FRと東レのバーチャル・カンパニーは、まさにここに相当する。補完的な資産を重ね合わることで、範囲の経済を実現することを目指す。

「オープン・イノベーション」から「X(クロス)カプリング」へ。それがX経営実現に向けた2つ目の切り札となる。そしてそのためには、まず、自社の資産の棚卸から始めなければならない。

 

【連載バックナンバー】
第1回 「日本企業が持続的競争優位を築くために
    どのような経営を目指すべきか」

第2回 「日東電工から学ぶ事業領域の持続的拡大」

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー