ファーストリテイリングに学ぶ
「緊密な連携」による新結合

3

「バングラデシュで成功すれば、
世界中の市場に出ていける」

 さて、FRに話を戻そう。FRは、X経営のもう1つのエンジンである「市場開拓力」においても独自のパワーを発揮している。その典型例がバングラデシュだ。

 バングラデシュといえば、マイクロ・ファイナスという仕組みで、貧しい人たちに銀行ローンを組成して生活レベルの向上を支援したグラミン銀行が有名だ。同銀行のムハマド・ユヌス創始者は、その功績によって、ノーベル平和賞を受賞している。

 柳井氏は、そのユヌス氏と手を組んで、グラミン・ユニクロを立ち上げた。バングラデシュの人々の手に届くような服を開発し、販売する。FRとしては、安かろう悪かろうといったチープな商品はつくれない。それでも、バングラデシュ国内で素材を買いつけ、縫製のやり方なども徹底的に見直して、できるだけ現地のお財布に合った商品をつくることに挑戦しているのだ。

 その1つのシンボリックな目標として掲げられたのが、「1ドルTシャツ」。さすがに1ドルというのはハードルが高く、今のところ、2~4ドルの商品をつくって販売している。

 筆者は、「どうしたら1ドルTシャツをつくれるか」というブレスト会議で、「中古をクリーニングして売れば?」と提案してみたことがある。しかし、柳井氏にみごとに一喝された。

「名和さん、それはレッドカードです。だって、それでは産業ができないでしょう。不可能に挑戦してでも、新しい産業をつくらなきゃいけないんですよ」

 バングラデシュのなかで回る産業を作る。高いハードルではあるが、それによって新興国市場が、長期的に持続可能な経済圏としてテイクオフすることを支援する。これこそ、FRならではの市場開拓力といえよう。

 販売方法としては、当初、グラミン銀行の特徴であるグラミンレディによる口コミと行商から始めた。大きな手ごたえを感じながら、それだけでは量の拡大を見込めないと判断し、今年の初夏には、首都ダッカに2店の店舗を開設した。世界中のブランドのあるアパレルで、バングラデシュに出店しているのは、FRだけだ。

 ソーシャルビジネスと位置付けながら、柳井氏は「CSR(企業の社会貢献)ではなくCSV(共通価値の創造)を目指す」と断言する。社会貢献だけではなく、ビジネスとしても成立し、自律的に拡大再生産できる仕組みまで高めることを目指しているのだ。

 バングラデシュでビジネスとして成功すれば、その先に巨大なアフリカ市場が見えてくる。「バングラデシュでうまくいけば、まさに世界中の市場にでていける」と、柳井氏は意気込む。まさに、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を企業理念に掲げるFRの面目躍如たるところだ。

次のページ  異業種との緊密な連携のために必要な、 資産の3枚卸し»
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー