「アジアでは、“鴨も鳴かずば撃たれまい”(出る杭は打たれる)、ということわざがあります。一方アメリカでは、“きしむ車輪は油を差される”(自己主張すれば、見返りが得られる)のです」。こう語るのは、『アジア出身者が成功するための外資系企業就職・昇進ストラテジー』(アルク、2007年)の著者、ジェーン・ヒャンだ。「2つの姿勢はまったく異なり、真っ向から対立するものなのです」

 その結果、どうなるか。CWLPの調査によれば、アジア系男性の63%、女性の44%が、キャリアで行き詰まりを感じていた。今の会社を辞めようと考えている人も多い。アジア系男性の19%、女性の14%が今後1年間のうちに退社するつもりだと答えたのに対して、白人男性では9%のみ、白人女性では10%だった。

 企業には、アジア系の人材を失う余裕などない。アジア人は、ホワイトカラーにおける人材パイプラインの重要な一部であるだけでなく、科学や工学、技術の分野でとりわけ優れた能力を有している。理工系の大学院で学んでいるアジア系と太平洋諸島系は、アメリカ人の2倍以上だ。これらの重要分野で、アメリカはすでに他国に後れを取っている。

 さらに、アメリカを本拠とする多国籍企業が中国やインドへの進出を拡大しているいま、その文化に精通するアジア系従業員がいれば、重要な競争優位を得られるだろう。

 しかし、アジア系をアメリカ流に「同化」させることは解決策ではない。賢明な企業は、アジア系の従業員が自社に大きく貢献できることを、非アジア系のマネジャーに教える必要がある。

 ゴールドマン・サックスが好例である、同社の連携・財務部門で人材マネジメントのグローバル・リーダーを務めるゲイル・ファイアスタインはこう語った。「東アジア出身の従業員にリーダーシップ研修を受けさせるだけでは、十分ではなかったのです。組織全体を通して意識を高め、マネジャー職を含む多くの従業員を教育する必要がありました」。そのために同社は、「東アジアからの声――グローバル・リーダーシップの再定義」というまもなく始まるプログラムを考案した。

 このプログラムでは交流フォーラムを通して、マネジャーは自社が擁するアジア系人材の多様性を学び、アジア文化の多様性について意識を高める。参加者は、文化的価値感が職場にどう影響を及ぼすのかを探究し、東アジア系の同僚が仕事で経験していることについて理解を深める。そして効果的なリーダーシップとコミュニケーションに対する認識を広げ、グローバルな人材の潜在能力を最大限に引き出すためのベスト・プラクティスを学ぶ。

 デロイト・コンサルティング・LLPの人事部門でマネージング・ディレクターを務めるバーバラ・アダチはこう言う。「アジア人のコミュニティは、アメリカの中でも外でも、経済の非常に大きな牽引力です。中国とインドが世界に及ぼしている影響力を理解すればするほど、アジア系を経営陣に加えることの重要性が認識されるはずです」

原注:本記事は、リパ・ラシッド(CWLP上級副社長)、ダイアナ・フォースター(フロリダ大学博士課程在学中、CWLPフェロー)との共同執筆である。


原文:Breaking Through the Bamboo Ceiling August 3, 2011

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・ワークライフ・ポリシーの創設者、所長兼エコノミスト。