日東電工から学ぶ
事業領域の持続的拡大

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 世界一をめざすために、世界で1番水処理に力を注いでいるシンガポールで技術開発を行う。グローバル・ニッチ・トップを目指す日東電工としては、コアとなるR&Dといえども、日本に閉じ込めておくわけにはいかないのだ。

 グローバルマーケティングはアメリカ、R&Dはシンガポール、それらをサポートするのが日本という三極構造。そして、アメリカのグローバル情報ハブやシンガポールのR&Dセンターには、世界各国の水のプロや技術者が集まっている。これが、日東電工流のグローバルモデルだ。

 日本の伝統的なプラントメーカー、たとえば日立や東芝だと、どうしても、「オールジャパンのインフラ輸出」という発想になりがちだ。先の民主党政権が肝いりで掲げたこの構想は、残念ながら掛け声倒れに終わっている。

 そもそも日本特有のインフラは、海外、特に新興国市場には全く合わない。現地の事情を見極め、全体の仕組みをゼロベースで作り上げるには、世界の知恵と現地の知恵を融合させたリバース(現地発)イノベーションを仕掛ける必要がある。そのためには、自社の無形資産をあえて多極化して、それぞれの得意分野を活かして連携するほうが、はるかに有効だといえよう。そしてそうすることによって、骨太な市場開拓力が組織内にビルトインされるようになる。

事業の軸足を移す際に最大の武器となるのはオペレーション力である

 このような2つの罠に陥らないためには、どこまで切実な危機感を持つかがカギとなる。本業に軸足を追いたまま、余力で多角化しようとしても、その事業は新たな本業にまでは育たない。日東電工のように、本業にとどまっていては将来がないという危機感が、軸足を一歩踏み出す勇気を駆り立てるのだ。

 そして、軸足を一歩踏み出した以上は、もう後戻りはできない。第2の創業のつもりで、新しい事業領域や新しい市場に骨を埋める覚悟が必要となる。このときに武器になるのが、オペレーション力である。これまで散々やってきたことを、ずらした領域で新たにこつこつと積み重ねていく。

 オペレーション力を基盤としつつ、脱学習と学習が積み重ねることによって、事業モデル構築力と市場開拓力を育んでいくこと―――これが学習優位を梃子としたX経営の要諦の1つである。軸をぶらさず、軸足を一歩、また一歩とずらしていく。この愚直なまでの「X(エクス)テンション(拡業)」運動が、持続的な成長をもたらすのである。

 

【連載バックナンバー】
第1回 「日本企業が持続的競争優位を築くために
    どのような経営を目指すべきか」

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー