アップル・リテールは、端的に言うと「ネット・プロモーター・システム」(NPS)の先進的な実践者である。他のNPS導入企業と同様に、アップルは「当社を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」という質問に対して0~10の点数で顧客に採点してもらう。9点または10点(薦める可能性は非常に高い)と答える顧客は推奨者であり、0~6点と答える顧客は批判者である。ネット・プロモーター・スコア(推奨者の正味比率)は、単純に顧客に占める推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたものである(図参照)。

 企業が実施するネット・プロモーター・システムにより、顧客が提供したフィードバックが数時間後には店舗スタッフに届くようになっている。店舗スタッフは、推奨者を出すために自分が何をしたのかを学ぶ喜びを体験し、なぜどのように批判者を出すことに加担してしまったのかをすぐに知ることもできる。アップルは、学習を計画的に迅速にすることで、単なる豪華な看板、ガラスの階段、偽者のロゴでは真似できないような顧客からの信頼やロイヤルティを従業員が獲得することを支援している。

 アップル・リテールの使命は、顧客の生活を豊かにすることであり、その達成度合いを測るためにNPSが活用されている。アップルがNPSの測定を始めた2007年時点では同社は163の店舗を構えており、全体のNPSは58%であった。今日、アップルは320以上の店舗を構え、NPSは70%と非常に高い。最高点を誇る店舗は、90%以上のNPSに到達している。しかしながら、評点そのものはフィードバックや学びほど重要ではないとしており、それにより従業員は正しいこと――ミッションを達成すること――に集中することができる。

 実際、それはうまく機能している。アップルのNPSの統括チームは、推奨者の熱烈な支持の背景にある理由を体系立てて理解するために、すべての店舗のフィードバックを収集し分析している。アップルの商品や店舗デザインが推奨者の情熱の主な理由であると思われがちであるが、推奨者が満足する主な原因のほとんどは店舗スタッフの応対である。

 当然のことながら、素晴らしい顧客体験を創り出すことにおけるアップルの成功は、利益ある成長への大きな機会をもたらした。典型的な家電販売店が1平方フィート当たりおよそ1,200ドルを売り上げるのに対して、成熟したアップルストアの売上げは1平方フィート当たりおよそ6,000ドルを越えるとされている。これは、どの種の小売店舗よりも断然高い生産性である-また、この数字は店舗での体験に触発されたオンラインの売上げを除いているため、実際よりも低めに出ていることは間違いないだろう。

 中国にある偽の店舗だが、まだ閉鎖していないとしても彼らが撤退するのは時間の問題だろう。彼らが本物のアップルストアと面と向かって勝負をする必要が生じた時、到底かなわないからである。

 

HBR.org原文:Apple Stores in China: The One Thing They Can’t Fake August 9, 2011

*本連載は、ロブ・マーキーがフレッド・ライクヘルドと共著した『ネット・プロモーター経営』の中身をハイライトしたものです。
*第2回は10月25日公開予定。

ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)
1973年に創設。世界32ヶ国に50拠点のネットワーク、約5700名を擁する世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。