現代のテクノロジー企業は、当然ほかにも、いくつか独特の戦略的特徴を持つ。ひとつは、単一の企業がコントロールする統合型製品から、互換性のあるパーツで構成されるモジュール型製品へと移行する 傾向だ。破壊的イノベーション理論ほど有名ではないが、クリステンセンもこの点を指摘している。「当初最も成功する企業は、最適化された相互依存型アーキテクチャを持つ企業である」――マイケル・レイナーとの共著、『イノベーションへの解』でこう述べている。「その後アーキテクチャはオープンに、産業構造は特化型へと進化するだろう」。初期には統合的なソリューションのほうがより高い価値をもたらすが、その後はコストの低さとカスタマイズ可能性によって、モジュラー方式が有利になる。

 これは、アップルに初期のブルー・オーシャンをもたらした破壊的イノベーション――アップルII(※)とマッキントッシュ――を見ても明らかだ。同社がつくり出したこの市場は、その後モジュラー型でよりオープンなPCアーキテクチャを開発したIBMに支配され、やがてマイクロソフトとインテルに取って替わられた(※原注:コメントで、アップルIIは統合型ではなくモジュラー型であるとご指摘いただいた)。

 マイクロソフトの台頭をもたらした競争優位の源泉は、ほかにも2つある。ネットワーク効果スイッチング・コストである。ネットワーク効果は、製品・サービスの価値がユーザー数の増加に応じて高まる時に生じる。スイッチング・コストはその名の通り、移行にともなうコストだ。カール・シャピロとハル・バリアンはデジタル時代の戦略に関する著書『「ネットワーク経済」の法則』で、「旧来の業界における経済は、規模の経済によって動かされてきた」と述べている。そして「新しい情報経済は、ネットワーク経済によって牽引される」。1990年代初めには、WindowsのPCはモジュラー型であるために安価になり、カスタマイズが可能になった。やがて顧客ベースがMacよりもはるかに大きくなったため、ほとんどの顧客にとってWindowsのほうが価値のある製品となった。

 これは部分的には、間接的なネットワーク効果によるものだった。ユーザーを多く持つWindowsは、ソフトウェアを開発するメリットをもたらす魅力的なプラットフォームとなった。次々と開発されるソフトウェアが、ユーザーにとってのWindowsの価値を高めた。一方、直接的なネットワーク効果も存在した。互換性のあるソフトによって、あらゆるユーザーの文書共有やコラボレーションが可能になり、Windowsのプラットフォームが一層価値あるものになった。いったんこれらのソフトに投資すれば、Windowsから別のものに乗り換えるにはかなりの苦痛が伴う。誰もそんなことは望まないだろう。

 スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した1997年には、Windowsのコンピュータは明らかに、ほとんどすべての点でMacよりも優れていた(私自身の経験からもよくわかる。職場では頻繁に強制終了するMacに悩まされたが、自宅では信頼できるWindows PCを使っていた)。ジョブズが戻ってくるまでアップルが生き残れたのは、ユーザーの間に理屈では説明できないロイヤルティが存在していたこと、グラフィックデザインのソフトが相変わらず優れていたこと(つまり、スイッチング・コストの高さ)、そしてマイクロソフトからの多くの支援にもよるものだった。

 復活後のアップルは、ネットワーク効果を巧みに活用している(iTunesストアとAppストアは間接的に、Face TimeとiChatは直接的に)。アップル製品を揃えて使うことで生まれる究極の便利さによって、本当の意味でのスイッチング・コストが生み出された。現在、アップルのiCloudを使っている2億5000万人のユーザーは、スマートフォンやタブレット、あるいはコンピュータを他社から買う前に、2度も3度も考え直すだろう。