生産現場だけでなく、事務系のホワイトカラー職場の生産性向上にも注目が集まるようになる。極論を言えば、いわゆる本社業務のうち、本国にある必要はないというものも相当多くあるはずである。バックオフィス的な業務は相対的に人件費の安い国にシフト可能であり、専門的な業務もまたグローバルな専門家に委託すればよいということになる。こうした極論を言ってしまうと極めて居心地の悪そうな職場になってしまうが、それでは優秀な人材が離れてしまうので、居心地のよさをある程度残しつつ、生産性向上を図っていくことが求められる。

 デジタル化による変化は、職場内だけでなく、個人の消費行動にも大きな影響を与える。しかも、その影響は先進国だけにとどまらず、新興国でも同時に広がっていくのである。消費行動の変化は、ともすれば先進国で流行し、定着したものが、何年も遅れて新興国の都市部、地方部に伝播していくというイメージで考えられがちである。しかし、インターネットの普及によって、そうした時間差はかなり縮小している。

 たとえば、各国のEコマースの市場規模を比較してみると、2012年ですでに中国は日本を抜き去って世界第2位になっている(第1位は米国)。また小売業のEC化率(店舗販売+ネット販売におけるネット販売の比率)でも、2012年時点ですでに中国(4.1%)は日本(3.9%)を抜いている。ちなみにポーランドはさらにその上(4.4%)にいる。リアルの店舗網が弱い地域ほど、ネットによる海外業者からの購買が盛んになるという。

 日本では宅配便のサービスが非常に充実しているものの、新興国ではどうなのか、という疑問を持つ向きもあるかもしれない。しかし、都市部に限って言えば、宅配物流網は新興国でもかなり整備されており、Eコマース普及の阻害要因とはなっていない。むしろリアルの店舗網を整備が整備されるよりも先に、ダイレクトのビジネスモデルが整備されていく可能性がある。

 インターネットの技術革新がどのような経路と速さで起こるのかは、予測困難かもしれない。インターネット出現当初は、Yahoo!のようなポータルサイトが勝ち組になると言われていたが、その座はGoogleによってとってかわられ、さらにAmazonのようなEコマースが急拡大し、さらにFacebookが利用者数を急拡大させるなど、かなり短い周期で主役が交代してきたようにも見える。逆に言うと、誰が主役になるかのビジネス・チャンスは広く残されていると見ることもできる。新たな主役が出るたびに、世の中の情報流通の非効率が解消され、利用者である個人が情報パワーを増すことになる。この流れはたぶん覆ることはない。

*メガ・トレンドの紹介はここまで。連載最後の2回は岸本氏による今後の展望とまとめとなります。第14回は2014年1月14日(火)公開です。

ブーズ・アンド・カンパニー
グローバルな経営コンサルティング会社として、世界のトップ企業及び諸機関に対し、経営レベルの課題を解決するコンサルティング・サービスを提供している。全世界57事務所に3,000人以上のスタッフを擁し、クライアント企業との実践的な取り組みを通じて、「本質的な競争優位」と「差別化された優れたケイパビリティ」の創出を支援することを使命とする。

 

【連載バックナンバー】
第1回「長期的ビジョンはなぜ必要なのか」
第2回「グローバル市場の変化を見通す」
第3回「グローバルな10のメガ・トレンド」
第4回「第1のメガ・トレンド 環境保護主義」
第5回「第2のメガ・トレンド 資源をめぐる戦い」
第6回「第3のメガ・トレンド 人口動態と富」
第7回「第4のメガ・トレンド 人口移動」
第8回「第5のメガ・トレンド 富の再配分」
第9回「第6のメガ・トレンド ビジネスのグローバル化」
第10回「第7のメガ・トレンド パワーシフト」
第11回「第8のメガ・トレンド さらに賢くなる個人」
第12回「第9のメガ・トレンド ライフスタイル変革」