ビジネスのグローバル化に関して、知識ベース社会といった動きも挙げておきたい。農業の時代の土地・領土と同じように、知的資産や知的創造能力などが勝負を決める決定要因となっており、その比重はさらに増していく。その結果、人材とイノベーション能力のグローバルな獲得競争が激化する。こうした面では、中国・韓国企業の攻勢が止まらない。人材のスカウトに対しても貪欲であり、スカウトした外国人が活躍できるようにと、社内の仕組みもかなり欧米的にしてきている。新卒採用主義にこだわる日本の大企業は、この10年で大きく後れを取ったといえる。日本人が日本企業に中途入社しても、社内の情報の流れがあまりにもインフォーマルなため、必要な情報を得るのに苦労するくらいである。長年の同僚同士でしか「すりあわせ」できない業務スタイルは、今後のグローバル競争においてはむしろハンデとなる。

 すでに、新興国に基盤を置く企業は、グローバル競争の新たなプレーヤーとして存在感を増している。フォーチュン・グローバル500の上位10社を見ると、2011年は第5位から第7位までを中国勢(シノペック、ペトロチャイナ、ステートグリッド)が占めており、まさに隔世の感がある(図表2参照)。これら3社は国の大きな後押しがあるエネルギー、資源関連の大会社だが、ほかにもメーカー、消費財、流通をはじめとする多様な分野の企業が、大きく成長する母国市場を追い風に急成長している。フォーチュン・グローバル500の国別のランキングを見ると、依然として米国が第1位、日本が第2位ではある。だが、ランクイン企業数を2005年と比較してみると、米国は176社から133社に、日本は81社から68社に減少している。かわりに、2001年に第3位になった中国は、2005年に16社しかいなかったランクイン企業数が、いまや61社と大幅に増加している。このほか、スイス、インド、台湾、ブラジル、ロシアといった国々がランクイン企業数を3社以上増大させている(図表3参照)。

 新興国企業の中にも、グローバルなM&Aを活発に展開している企業がある。たとえばアルセロール・ミタルは、インドのミタル家がさまざまな海外企業を買収して世界最大の鉄鋼メーカーにまでのし上がった。本社は旧アルセロール本社のあったルクセンブルグにあるが、CEOミタル氏の一族が4割以上の株式を握っている。インドのタタ・モーターズはイギリスのジャガーとランドローバーを買収し、中国の吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団はスウェーデンのボルボ・カーズを買収した。ブラジルのアンベブはベルギーのインターブリューと合併し、さらにアメリカのアンハイザーブッシュ(バドワイザーで有名)とも合併し、世界最大のビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブとなった。

 新興国の企業は新興国や発展途上国の市場での戦い方を熟知している。低コスト体質で、新興国消費者向けの商品設計・企画に慣れており、意思決定も速い。さらに往々にして政府の後押しもある。新興国企業による先進国企業に対する「逆」買収も、これまでは「ニュース」になったが、やがて常態化するであろう。

*第10回は2013年12月9日(月)公開です。

ブーズ・アンド・カンパニー
グローバルな経営コンサルティング会社として、世界のトップ企業及び諸機関に対し、経営レベルの課題を解決するコンサルティング・サービスを提供している。全世界57事務所に3,000人以上のスタッフを擁し、クライアント企業との実践的な取り組みを通じて、「本質的な競争優位」と「差別化された優れたケイパビリティ」の創出を支援することを使命とする。

 

【連載バックナンバー】
第1回「長期的ビジョンはなぜ必要なのか」
第2回「グローバル市場の変化を見通す」
第3回「グローバルな10のメガ・トレンド」
第4回「第1のメガ・トレンド 環境保護主義」
第5回「第2のメガ・トレンド 資源をめぐる戦い」
第6回「第3のメガ・トレンド 人口動態と富」
第7回「第4のメガ・トレンド 人口移動」
第8回「第5のメガ・トレンド 富の再配分」