しかし、この問題を早くに取り上げ警鐘を鳴らした元米国副大統領のアル・ゴア氏の2006年の著書『不都合な真実』およびその映画は世界的なヒットとなり、熱心な環境保護団体や著名人の活動により、「環境」「エコ」はある種の流行にすらなった。その動きは国際社会、ビジネスから個々人の活動にまで広がりをもつが、今後起きる可能性のある環境の破壊や変化を未然に防止するための「環境保護」と、起きてしまった、あるいは起きうる環境の破壊や変化に対応する「環境変化の受容」の2つに整理することができる。

 気候変動の監視と阻止、生物圏保護や生物多様性の維持など、「環境保護」の動きは、先進国だけでなく世界的な動きになりつつある。しかし2010年に名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)での生物多様性の議論にも見られたように、環境問題そのものというより、権益確保やナショナリズムなどと組み合わさるために、ルール作りの不透明さは今後ますます増していく。気候変動に関しては、環境保護を唱えつつ、経済活動への過度な負担による経済の減速を恐れる先進国と、国がまさに成長途上にあり、これからますます活動量、つまり二酸化炭素の排出量を加速しようとしている途上国とのあいだで、二酸化炭素の排出の削減目標に合意するのは至難の業である。そのあいだに、実際の状況は変化していく。たとえば米国は1990~2010年のあいだにCO2排出量を10%増やした。欧州(EU-15)は、1990~2010年に11%の削減に成功したとされるが、その削減の多くは旧東ドイツの旧式の施設の閉鎖などによってもたらされたものである(図表2参照)。また、世界的な森林の破壊が進んだが、その変化はとくに北アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋といった地域において若干の回復基調にあるようである(図表3参照)。

 この間に消費者意識が世界的に高まり、社会的責任として環境に配慮することはもはや産業界で存続を許されるための必要条件となった。かつての慈善活動、社会貢献的な趣から一変し、環境に大きな影響を与える産業ではとくに真剣な対応が始まっている。加えて、対応の不十分さに対するバッシングも大きくなっている。環境保護活動家団体のグリーンピースは、チョコレートの原料であるパーム油を確保するためにマレーシアやインドネシアのオランウータンが住むジャングルの伐採に加担しているとして、チョコレートメーカーを糾弾するキャンペーンを行った。2カ月で30万件の苦情がチョコレートメーカーに寄せられ、メーカーは2015年までに生物多様性に配慮したサプライチェーンの構築を約束した。