また、近年では新興国企業の側から日本企業への提携打診も増えてきている。日本企業の多くは、こうした打診に対して及び腰であり、「技術情報だけは決して漏らさないように」という懸念を重視するあまり、またそもそもすべての意思決定が官僚的で遅いこともあり、せっかくの提携話もなかなか実現しないようである。長期的にどう陣取り、どういう相手を味方につけて、誰と戦うのか、という全体構想がないままでは、味方につけるべき相手との提携話すら頓挫してしまう。

 ボトムアップで情報をすり合わせて最適な手法を探り出すというのは、日本の大企業の持つ美徳であり、一種の能力でもある。しかし、グローバルな市場のなかでどう陣取り、誰を味方につけるべきかという判断は、決してボトムアップで行うものではない。個別の提携相手の精査に関しては各事業部で行うことが必要であるにしても、将来の世界市場の変化をどう見据えるのかという点に関しては、すべての事業部長が共通の理解を持っていなければならない。A事業部長は「中国の新中間層市場が今後急成長する」と見ているのに、B事業部長は「中国の人口はやがて頭打ちであり、じきに需要は減速するに違いない」と見て、まったく逆の打ち手を考えるというのでは、さすがにまずい。

 長期的なスタンスで将来を見通す場合には、景気変動のサイクルや為替の動向を過剰に気にする必要はない。もちろん、長期的に為替がどちらの方向に進むのかは、各国の成長性およびインフレ・デフレの傾向によって、ある程度想定はできる。ただし、為替の動向を読みながら事業展開シナリオを考えるよりは、その変動の原因となるような構造変化そのものを読んで事業展開を考えるほうが理にかなっている。

 次回以降の連載では、10のメガ・トレンドについての紹介を行っていく(図表1参照)。

*第3回は2013年10月21日(月)公開です。

ブーズ・アンド・カンパニー
グローバルな経営コンサルティング会社として、世界のトップ企業及び諸機関に対し、経営レベルの課題を解決するコンサルティング・サービスを提供している。全世界57事務所に3,000人以上のスタッフを擁し、クライアント企業との実践的な取り組みを通じて、「本質的な競争優位」と「差別化された優れたケイパビリティ」の創出を支援することを使命とする。

 

【連載バックナンバー】
第1回「長期的ビジョンはなぜ必要なのか」