企業の機能と性質

 企業の主要な経済的機能は、財やサービスを経済に供給するために、企業内で立案され実行に移される諸計画に即して生産資源を利用することである。このことには、一般に同意が得られよう。企業内の経済活動と「市場」における経済活動との間の本質的な違いは、前者は1つの管理組織の内部で実行されるが、後者はそうではないところにある。事業の管理単位の規模をどのように定義するにせよ、その規模の増大は重要である。なぜなら、この単位が大きければ大きいほど、生産資源の異なる用途や時間外労働への配分が、市場の力によって直接コントロールされる範囲はより小さくなり、経済活動が意識的に計画される範囲はより大きくなる。大企業が社会的に望ましいかどうかの論争は、生産・流通組織における意識的な計画の範囲が増大することが「よい」結果をもたらすか「悪い」結果をもたらすかに関する意見の齟齬、あるいは、かりに「よい」結果をもたらすとした場合、生産的資源を広範囲にわたり管理する組織は、民間の手に委ねられ、私的な利益の機会にしたがって運営されるべきかどうかに関する意見の齟齬のいずれかに由来する。

 そこで、われわれの目的に照らした企業の定義の重要な一側面として、1つの自律的な管理上の計画立案単位としての役割が含まれる。その活動は、相互に関連をもち、また、それらが企業全体に与える影響に照らして形成される方針によって調整される。

 すべてのこのような単位は、全社的方針に責任を負う何らかの形の中央組織をもち、企業の管理階層の運営はその方針の下で行われる。われわれは、企業のこの「最後の法廷」を「最高経営陣」と呼ぶことにしよう。実際には、それは企業の取締役会あるいはその委員会、社長、およびゼネラル・マネジャーによる何らかの組み合わせから構成されている。誰が最高経営陣に含まれるかは企業によってまちまちである。事実上のグループ構成がどうであれ、それは企業の管理の枠組みの中で最高の権威をもつものとして実際に受け入れられねばならないし、また、多かれ少なかれ一致した意思決定を行える規模でなければならない。一般に、最高経営陣は、企業の管理組織の構築や変更、全社的方針の決定、そして下位の経営幹部には行使の権限がないか、もしくは、あらかじめ明確な原則が設定されていない問題の決定に責任を負う。通常この最後のカテゴリーには、少なくとも財務や投資に関わる重要な決定やトップ・マネジメントクラスの人選が含まれる。

 理想的なケースでは、企業の「官僚機構」が円滑に機能するような管理の枠組みがひとたびつくられ、管理者たちが意思決定の指針とする方針が決まれば、行われるべき個々の意思決定がこの方針に沿ったタイプと範囲のものである限り、最高経営陣による干渉は不要である。これは、すべての意思決定があらかじめ厳格に限定され、判断の行使が許されないことを意味するのではなく、所定の決定を誰が下すか、決定の際に考慮されるべき原則、および原則の影響の範囲に関して混乱がないはずだというだけのことである。