海外工場における発見型改善実施のポイント

 このような前提に立って、3Sを中心とした発見型改善を海外工場で展開する際のポイントを列挙してみると、それぞれ極めて基本的なことではありますが、以下の7点を指摘することができます。

①仕事の基本、生活態度の徹底

 特に新設された工業団地で工場を新規で立ち上げた場合には、工場での作業経験のない作業者を雇用するケースが多く、作業者に対して、社会人としての生活態度を1から教えなければならないこともあります。例えば、挨拶の励行、時間の遵守(遅刻をしない、休憩時間を守る)、仕事中は私語や居眠りなどは厳禁、制服・帽子の着用、ゴミはゴミ箱に捨てる、などの基本的な生活態度です。びっくりされる方もいるかもしれませんが、上記のような生活態度を身につけていない農村部出身の作業者は意外に多いのが実態です。日本でも、明治期に同様の問題を抱えており、初等教育で目指されたものは、生活態度を身に付けた労働者の育成でした。

②工場トップが毎朝1回現場を巡回する

 次に、トップ自らが毎日、現場・現物で生産状況を直接把握し、従業員に適切に声掛けする現場巡回が重要になります。これは、トップ自らが毎日巡回することで、職場全体に対して現場・現物を重視する姿勢を示し、生活態度の徹底度合いをモニターできるだけでなく、現場監督者・作業者の意識を向上させることができるからです。前述したアンケート調査でも、改善活動が進んでいる企業ほど、経営トップの現場訪問頻度が高い傾向にあることが明らかになっています。

③清掃の励行

 実際に、3Sを実施する際には、まず清掃から始めることが有効であると考えられます。これは、3Sの中でも特に清掃は日々行う慣習的行為であり、清掃を通じて間接的に規律を徹底することができるからです。また、清掃は品質の維持・向上に直接結びついているため、3Sの中でも特に基礎的な活動と言えます。工場トップが現場巡回を行う際に、清掃状況をモニターし、現場従業員に対して適切に声掛けを行うことが有効です。

④従業員自身のメリットにつながる改善を優先する

 社会人としての生活態度の徹底、トップ自らの現場巡回、清掃の励行がある程度定着してきた段階で、3Sを中心とした発見型改善を本格的に開始します。実施に向けてまずやらなければならないことは、3Sを実施することで、現地の従業員自身のメリットにつながることを説得し、実際にメリットにつながりやすい改善を優先的に実施することです。従業員自身のメリットとは、具体的には、自分が担当する仕事が楽になる、仕事がやりやすくなるなどのメリットです。

 そもそも、海外では、職場の環境整備は、従業員を雇用する前提であり、経営側が準備しておくものであって、雇われた自分たちが自ら行う仕事ではないという意識の方が一般的です。そのため、仮に経営的に効果の高い改善であっても、従業員自身のメリットにつながらない改善に対しては、猛烈な反発を受ける可能性があります。結果的に仕事の負荷が増加したり作業がやりにくくなる改善であれば、なおさら賛同は得られません。そこで、まず従業員自身のメリットに直接つながる改善を優先的に実施し、改善を行えば自らにとっても大きなメリットがあると認識してもらうことが必要になります。